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後悔をしないために [随想]

 NHKの職員の多くは良識的で、本来の公共放送の存在意義を充分に理解していると信じている。そして、12月20日に放送された『新・映像の世紀第3集時代は独裁者を求めた』については、それがはっきりと表現されたと感じた。彼らが危機感を持ち、必死に伝えようとしているもの、それを私も共有できた。ニーメラーの次の詩も紹介された。

ナチスが最初共産主義者を攻撃したとき、私は声をあげなかった
私は共産主義者ではなかったから
社会民主主義者が牢獄に入れられたとき、私は声をあげなかった
私は社会民主主義ではなかったから
彼らが労働組合員たちを攻撃したとき、私は声をあげなかった
私は労働組合員ではなかったから
そして、彼らが私を攻撃したとき
私のために声をあげる者は、誰一人残っていなかった

 今更ながら、12月上旬に私は朝日新聞から東京新聞へ切り替えるための連絡を朝日新聞取扱店に連絡した。若そうな男性の声が残念そうな声で言った。「分かりました。理由を教えて頂けますか?」
「私は30年以上朝日新聞を購読してきました。朝日新聞の社員の殆どは、真のジャーナリズムを理解している、良心を持った人々だと考えています。しかし、何ですか。昨年の特定秘密保護法以降の報道姿勢は。まるで、政府の公報機関に堕してしまているではないですか。」
「実は、昨年以来、購読停止が何件もあるんです。」
「私は、多くの社員は信用しているんです。政治的圧力に屈している経営陣が許せないのです。朝日新聞は戦後、戦前に戦争協力する一方的な情報に基づく報道を行い、国民を間違った道に導いてしまったことを痛切に反省し再出発を誓った、そうではありませんか。それがなんですか、今は。『公平』と言う都合の好い言葉に尻込みして、圧力を受けたまま、当らず触らずの報道ばかりしているではないですか。」
「・・・」
「その事への抗議として、一読者の意思表示として、朝日新聞の購読を止めます。」
「分かりました。同じように言われる人は多いのです。しっかりと、報告しておきます。」
このようなやりとりがあった。彼の対応には、誠実さが感じられたので、少しほっとした。もし、新聞取次ぎ店の人々までが妙な対応をしたとなれば、政府の言論に対する圧力が会社を通じてそこまで及んでいることになるからである。

 それにしても公平や中立を求めるのが、政府側の人間であるとは。それらを求めるのは弱者であろうに。
 そう言えば、現違憲状態首相の大叔父も、辞任に当って報道陣を退け、話題になった。

  ALL ANIMALS ARE EAQUAL
 BUT SOME ANIMALS ARE MORE
  EAQUAL THAN THE OTHERS

 George Orwellが”Animal Farm”で書いたように、権力者は言葉の意味を自分の都合に合わせて変更させる。

 Speech is gold, however, silence is lead.20151216DSCN2999.JPG
 
 この絵は、昨年来の日本の政治、政治家達の発言などを一つの型に入れて描いたものである。愛想笑いする男の黒子なのか、はたまた監視カメラのようなものなのか、解釈は自由である。
 杞憂であることをどれだけ望んでいることだろう。しかし、物事は彼らが計画した方向に、現段階では近付いている。8年も前に、斎藤貴男氏は『報道されない重大事』(ちくま文庫)のはしがきで、「前年の十月に発表された自民党の新憲法草案は、国の交戦権を否定した九条二項の全面的な書き換えや、国家権力の暴走を抑えるための憲法という近代立憲主義の原理原則を覆して国民の生き方規範にするとても言いたげな強権的法体系へのコペルニクス的転回が図られていることに照らして、あまりに危険な情勢であると強調せざるを得ない。」と述べている。
 沈黙は決して金ではない。訥弁でもよい、自由、博愛、平等、正義を求めて発信してゆけば、それが金である。そのように強く感じている。




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lamer

朝日新聞は新聞の象徴って感じがあるのでしょうか?
それともインテリジェンスの象徴とでも思っているのでしょうか?
新聞の中ではやっぱり朝日新聞だって感じがあるのでしょうか?
そんな認識は間違っているのでしょうか?
朝日新聞が一番購読者が多いですよね。
それでアヨアン・イゴカーさんは取次店の人が誠実だったので其の儘
購読を続けられるのですね。
新聞によって情報もいろいろですから是非朝日新聞の情報をよろしく
お願いいたします。
私はもう何年も東京新聞を取り続けています。
by lamer (2015-12-27 20:48) 

アヨアン・イゴカー

lamer様
私は上に、朝日新聞の購読を止め、東京新聞に切り替えます。
右よりの人々からは、赤の新聞だなど呼ばれている朝日(右よりの人々の一部は自分に反対の意見についてはレッテルを貼って、情報に疎い人々にこうやって先入観を与えてしまうのです)でさえも、お前もか、と言う失望感からです。
尤も、ネットでも色々な情報が流れていますので、自分が信頼できると思われるfacebookの人々の情報、意見なども参考にしています。勿論、本を買って読んで自分の知識の補足もしています。一番頼りにしているのは、自分の良心です。「己の欲せざる所は人に施すなかれ」世界共通のこの黄金律が基準です。自分が言いたいことを言えなくなったら嫌ですから、言論の統制には反対です。人を犠牲にしても自分の利益を求めようとは絶対に考えませんので、貪欲資本主義には反対です。何の恨みもない人に殺されたくないですし、殺したくないですから、私はやはり間違いなく平和主義者です。
by アヨアン・イゴカー (2015-12-27 21:16) 

kazg

「新・映像の世紀第3集」深く、重い内容の、力作でした。NHKの良心を垣間見せた作品だったと思います。ニーメラーの詩も、あの映像の迫力と相まって、きわめて説得力ありました。
by kazg (2015-12-27 21:52) 

majyo

私も朝日新聞を30年以上読んできましたが
どこか違うと思って、引っ越しを期に毎日に変えました
しかしその毎日もやはり何か違うと思うに至り
東京新聞に変えたのです。
変えるにあたって朝日新聞は販売店とトラブルになりましたが
こちらはを拝見し、自分の意志は、新聞社に伝えれば良かったと思っています。
アヨアンさんはキチンと言われたのですね
一人一人は、良心を持っていると思うのに
全体となると、政権に都合の良い報道をして、真のニュースを伝えません
70年前に新聞が加担した先の戦争を
しっかり、思い出してほしいです

NHKの番組、知っていたら観たかったです
by majyo (2015-12-28 08:41) 

doudesyo

こんにちは。「新・映像の世紀第3集」やっているのに気付かずわかった時には僅かしか見れませんでした。もう一度再放送してくれないかなと思いますが、オンデマンドで2016年1月3日まで見れるようにはなっているようですね。朝日新聞は今でも購読中ですが、バランスをいつも考えているので職場にある他紙や地方紙なども必要な時には見るようにしています。原発事故後、報道のあり方、地元の感覚と記事内容の隔絶感、おそらくの売名行為やNPOと言いながら私利私慾の行為が散見し、情報のあり方とNPOも含め何を信用していいのか(今も若干ありますけど)と考えさせられました。ただ、アヨアンイゴカーさんもおっしゃる通り、今はまだ自由なインターネットがあるので一方通行の情報ばかりではないのが救いです。現在は、自然は嘘をつかない、これが真実だと思っております。^^;
by doudesyo (2015-12-29 11:32) 

Enrique

NHKと朝日新聞とどちらが罪深いのでしょうか。新聞は止めれば済む事ですが,NHKはテレビがあると自動的に契約になっています。制度上の問題と言え,こちらの方が非道い様にも思います。
私はテレビは見ず,ラジオニュースを聞く限り報道の偏りはひどいものです。NHKはそのニュースの偏りをTV番組で必死にバランスとろうとしているのかもしれません。しかし番組そのものを制作会社に丸投げしていることも多いので,組織内のどの程度の良心なのかは分かりませんが,アヨアンさんが感じられた様にこのような警鐘を鳴らす事は評価出来るでしょう。
by Enrique (2015-12-30 09:07) 

アヨアン・イゴカー

MIKUKO.様、ビタースイート様、lamer様、ChinchikoPapa様、kazg様、kurakichi様、夢の狩人様、般若坊様、Ujiki.oO様、Mitch様、caveruna様、ネオ・アッキー様、kinkin様、mimimomo様、gigipapa様、majyo様、旅爺さん様、dumbo様、くらま様、mitu様、BrerRabbit様、carotte様、シルフ様、八犬伝様、かずのこ様、AKI様、SILENT様、SACHI様、めもてる様、ぼんぼちぼちぼち様、U3様、yamagara22様、せとっこ様、paul_226様、doudesyo様、水郷楽人様、芝浦鉄親父様、kohtyan様、めぎ様、silverag様、siroyagi2様、Enrique様
皆様nice有難うございます。
by アヨアン・イゴカー (2015-12-30 12:53) 

アヨアン・イゴカー

kazg様
コメント有難うございます。この『映像の世紀』のように海外の良識ある人々の発言や作成したものを映像で流すことによって、意志を伝えると言うのも大切な方法だと思います。

majyo様
私は、楽観的で能天気な人間ですから、多くの人間は普通またはまともなのだと思っています。それが、組織や社会などにいることによって、本来の意志とは異なる決定に従うことを余儀なくされることが多いと思います。
個人的に見ても、今の会社では約30年間、理不尽な決定がが時々なされ、従うことが求められています。理不尽だと考えられるにも拘らずこうして決定されてきたことのいくつもが、破綻して失敗してきました。
政治はどの国でも(例外もあるかもしれませんが)、良心的な人間が行うと言うよりは、利害関係者の力関係ばかりで動いています。ですから特に国を危うい方向に誘導しようとしている時は、大きな声を上げて防がねばなりません。そのためにも信頼度の高い、正しい情報を、早く届けるのがジャーナリズムの使命です。

doudesyo様
自然は嘘をつかない、これは真実だと思います。どのような隠し事をしようとも、結果は自然になるようになる、露見する、そういうものだと思います。アメリカが水爆実験を繰り返した1950年代、沖縄附近では大量の放射能が検知されていたそうですが、沖縄県人に対しては、現地の米軍は虚偽の検査結果を提示して安全だと回答した、と言う内容のドキュメンタリー映像がありました。
原発建屋の爆発以降、かなり早い時期にアメリカから日本政府の持つ情報よりも精度の高い情報提供があった、にも拘らずその日本では公表はされなかった(アメリカは公表していた)と言うようなお粗末なことの連続。それを知らずに放射能の高い地域に自主避難した家族が高濃度の放射能を浴びることとなった、もし知っていれば、と悔やむ母親。
3.11後の原発の問題は、東北のみでなく関東南部にまで影響を与えています。が、情報が制限されていて、現状が安全なのかどうか、誰も考える必要性があるかどうかすら考えもしません。問題にされなければ考えないのです。ごく当たり前のことではあります。ジャーナリズムは政府には事実の提供を求め、国民には危険を逸早く知らせる義務がある、と考えております。

Enrique様
NHKの契約がTVとそれに準ずるものの購入に連動しているのは許しがたいことです。
映像と文字とを比べると、映像の方が訴求力が強く、それが全国放送で一方的に流れることを考えると、その影響の大きさにぞっとします。(最近、ラジオは全く聴かないので分かりません。)
TVはNHKも民放も、そのニュースや特集の内容について最早日本のメディアとしてではなく、さながら中国や北朝鮮のTV番組を見るように、構えて見る様になっています。


by アヨアン・イゴカー (2015-12-30 13:36) 

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