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宮沢賢治作品に基づく映像作品 その8『オッベルと象』 [youtube]

 『オッベルと象』をやっと完成させることができた。この賢治作品のために、曲を書いたのはもう二十年近く前ではなかったかと思う。物語から脚本を書いたのが、4年ほど前。その後絵コンテは終わったものの、他の作品の映像化を優先したために、完成が遅れた。
 この作品は、賢治の作品の中でも、牛飼いの「調子よい語り」(五七調で書かれているわけではないが)が好きで、それがなんとか表現できないかと考えていた。そして、最初はサイレント映画風の画像にし、それを横で活弁士が語り、説明するというやり方を考えた。しかし、それが予想外に難しいと感じて、今回のような作り方に変更した。
 賢治の弟宮沢清六の思い出に、サイレント映画について書かれているものがある(『映画についての断章』pp326-332 筑摩書房宮沢賢治全集別巻)。そこには、当時の映画館、上映場所について述べられている。館内に漂う映写機で使われるアセチレンガスの臭いのこと、舞台横にいる小編成の楽団のこと、活弁士のこと。また、酔っぱらって弁士に野次を飛ばした観客、怒って沈黙してしまったが、再び奇声を上げて説明をした弁士、その二人のやりとりを賢治は「映画などよりこの方が何倍も面白かったぞ。」と楽しんでいたことなど、非常に興味深い。
 『かしはばやしの夜』では、浅草オペラも好きだった賢治が、軽歌劇のような作品を想像しながらかいたであろうと思いながら映像化した。今回は、サイレント映画も好きでよく見ていた賢治のことを考えると、『オッベルと象』で話を進める牛飼いは、どうしても活弁士と重なって見えるのだ。
 そこで、この作品では、牛飼いの声を担当した鳥山コケ子氏に、出来るだけ活弁士を想像しながらその台詞を読むように頼んだ。

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