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株式会社劇団『木馬座』 と 劇団『青麦座』 [回想]

「白雪姫と七人の小人」  随筆

 この写真は私は劇団木馬座を退職する頃、川崎市生田にあった劇団の倉庫のまえで撮影されました。『白雪姫と七人の小人』には熊は登場しませんが、より子供達の興味を強く引き付けられるように、この熊が台本の中に入ることになったと思います。
 当時、劇団『飛行船』と言う団体が、劇団木馬座の競争相手でした。『飛行船』では、『ジャックと豆の木』や『長靴を履いた猫』などで巨人を登場させ、その大きさがかなり衝撃的でした。パンフレットに掲載されている写真を見れば、どうやってそれを製作しているかは一見して分かりましたので、その大きな熊を作るのは仕掛け物を得意としていた私が、作製者として名乗りをあげました。
 2.5メートルから2.8メートルの高さになるこの熊は、上半身を発泡スチロールで形を作り、浅草橋にあった衣料問屋「宮下株式会社」で購入したボアを貼り付けて作りました。高さが異なるのは、この熊を着る人間の身長によるためです。目玉にはゴムボールをいれ、青い色でグラデーションをつけた、そんな記憶があるのですが、ゴムボールはちょっと曖昧です。最初作った時には、『飛行船』の人形のように、中に入る人間の腕を黒い布で包み、熊の手を操作していました。それは棒で操る「ひとみ座」の人形達と同じ方式でした。しかし、裏方からの助言もあり、黒い腕の棒が熊の腕を支えているのはみっともないとのことで、熊というふくよかな動物の特性を活かして、ボアの中に操作部分を吸収してしまいました。ですから、この写真では、中に入っている人間の腕は見えません。
 『白雪姫と七人の小人』の美術は、美校出身のO氏が担当しました。森の情景のドロップの色彩も美しく、その森から、上手の黒い袖幕からこの大熊が登場すると、客席からは子供達のどよめきの声が起こりました。あれは、実に楽しい瞬間です。
 折角作ったこの熊も、トラックに積まれて移動します。そのため、大道具を積んだ後にシートを掛けられ、ロープで縛られることになるものですから、この写真では形が大分崩れています。もう少しハンサムな熊だったと思います。
 劇団木馬座の思いでは、別途、本にまとめようと思ってはおります。
 

2007/10/20
「『ヘンゼルとグレーテル』その2」  随筆

 人形芝居『ヘンゼルとグレーテル』を作ろうと思った最初のきっかけは、実はゲーテの『ヴィルヘルム・マイステルの修行時代』に出てくる人形でした。あの小説を読み始めた時、大学生だった私は、描かれている場面に憧れを抱きました。そして、甥っ子や姪っ子たちのために、いつか人形芝居を上演して見せたいと感じるようになりました。勿論、自分の子供達に対してでもよかったのですが、結果として子供のいない私には、甥っ子、姪っ子が自然と対象になったのです。
 この芝居を作るためには、バックドロップ(背景の書割)や大道具、小道具を作る必要がありましたが、それらすべては劇団木馬座時代に経験しておりましたので、全く抵抗なく製作してゆきました。土日が休日だった海運ブローカー時代に、休みを返上して、作りました。先ず、台本を書き、その後は同時進行で人形の頭を作ったり、衣装を縫ったり、音楽を書いたり、ピアノやエレクトーンで録音したりしました。効果音を録音するのも愉快でした。
 この芝居はアフレコ形式なので、音楽と台詞をいれたテープを作成します。そのために、妻や友人、姉、義兄、その友人たちに声の出演を依頼しました。雨が降る日に、録音したのを記憶しています。義兄が「くま木工」と言う名の木造の家を建てましたが、その大工作業をしている金槌の音が背景に入っているのも、なかなかいい効果音になりました。
 今はもう付き合いのない、九州の劇作家B君が読んだ魔女の台詞は、九州訛りがあって、なかなかいい味が出ていました。彼が読んでくれたお陰で、この録音は私の記憶に残る作品になりました。
 あるクリスチャンが経営していた幼稚園の子供達が、ハレルヤ号と言うボックスカーに乗せられて観客として来てくれました。臨時に作られた木の客席には、鈴なりの子供たち、私の両親、兄弟、その子供達が座って、芝居を観劇してくれました。
 当時、まだ劇団を退職したばかりだったので、芝居を上演することが当たり前の私でしたが、今考えてみれば、この公演は盛況で、大成功でした。後日、B君が宇宙館という下北沢かどこかで上演した芝居などは、客がどれだけ入るか、やきもきして入り口で立って様子を見ていました。公共の施設を借りたり、大道具や小道具、搬入など普通に製作を考えれば、赤字にもなることもあり、B君にとってはあの公演真剣勝負だったと思います。彼はいい芝居を書いていたのですが、止めてしまって、九州に帰ってしまいました




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