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今様伊曾保物語 その1 狐とコウノトリ [今様伊曾保物語]

 昨年から計画していた『今様伊曾保物語 その1』。やっと挿絵を描くことができた。話の展開も少しだけ捻りを加えた。

今様伊曾保物語 その1 狐とコウノトリ2011313日 木曜日 DSCN2118.JPG
 高慢ちきな狐がおりました。風の噂にコウノトリがカエルたちの女王様になったと聞いたものですから、なんとかその鼻をへし折ってやろうと考えました。もっとも、コウノトリには鼻は穴しかあいていませんけれど。
 そこで狐はコウノトリにお昼をご馳走したいので、一度来て欲しいという手紙を書きました。その手紙を貰ったコウノトリは自分もカエルたちとは言え、女王様になったのだから、大分徳が高くなり、世間でも評判になったに違いないと勘違いし、オメカシして出かけてゆきました。 コウノトリが狐の家に着くと、狐は女王様をお迎えして光栄である、と言うようなおべんちゃらを言ってから、家の中に案内してくれます。そして、テーブルの上には平たいお皿が置いてあって、何とも言えない美味しそうなスープの臭いが漂っています。狐はコウノトリを席に案内すると「何もございませんが、どうぞお召し上がり下さい。」と言います。コウノトリ「これは結構なスープで、美味しそうですね。」狐「さて、お口に合うとよいのですが。さぁ、どうぞどうぞ。私も食べましょう。」と言って、長い舌でぺろぺろぴちゃぴちゃと、本当に美味しそうにスープを舐めるのです。コウノトリは嘴で皿をコツコツと叩くだけで、スープはちっとも口の中に入ってきません。狐「あら、コウノトリさん。口先だけでなく、もっと盛大にお食べ下さいな。」コウノトリ「いえ、結構なお味で。充分堪能致しました。」 コウノトリはお腹がぐうぐう言わせて、腹を立てて帰ってゆきました。狐は、その後姿を見ながらにやりとしていました。 
 
数日後、狐のところに招待状が届きました。勿論コウノトリからです。お昼ごはんを用意したので来て欲しいと言うのです。狐はどんなご馳走を用意してくれているのだろうと、わくわくしながらコウノトリの所へ行きます。 テーブルの上には口の細長い瓶が置いてあります。コウノトリ「御口に合いますかどうか。それでも、手塩にかけた料理ですから、どうぞ召し上がれ。私も失礼して頂きます。」と瓶の中に嘴をいれて、瓶の中に入っている茶碗蒸しを美味しそうに食べます。今度はコウノトリが狐が瓶の口ばかりを舐めているのをにやりとしながら見ています。コウノトリ「瓶の口もなかなか好い味がするのですが、瓶の奥の方にもっと美味しいものがございますよ。」狐はすっかり腹を立ててこのように悪態を着きます。「コウノトリさん、これはご馳走とは言えませんな。ご馳走とは人をもてなす為に準備すべきですよ。こんな失礼な接待は初めてだ。」と、自分が売った喧嘩なのに人のせいにしています。そしてこう言い放ちます。「また、こちらからご招待しますよ。」そして、尻尾を左右に大きく振りながら帰って行きます。DSCN2119.JPG
 それから何年かが経ちました。狐からの招待状がコウノトリのところに届きました。 コウノトリは今回は前回の仕返しをしてやるぞ、と意気揚々、自分のご馳走も両手に持って出かけて参ります。
コウノトリは「今日は。お久しぶりです。ご馳走があるとのこと、是非賞味させて頂きたいと存知、参りました。私はお土産もご用意しておりますので、後ほどお召し上がり下さい。」と丁寧に頭を下げます。何だか様子のおかしいのに狐はきづきましたが数年前に出したのと同じスープを浅い皿で出しました。コウノトリは軽く咳きをして、何度か瞬きをすると、スープにスプーンのようになった嘴をいれ、仰向けになって飲み始めました。「おいしゅうございます。」狐はこれにはがっかりしました。コウノトリは持って来たお土産の瓶を出します。「どうぞ。」狐はまるでアリクイ鼻面のように長くなった口を、瓶の中に入れ茶碗蒸しを食べます。「これはまた結構なお味で。」二人とも、自分達が前回食べることができなかったご馳走を食べることが出来て大層満足しました。そして、ほぼ同時に自分達が用意した料理を自分たちも食べてみようとしました。ところが、残念!狐は尖った口先になってしまって、スープがちっとも上手に舐められません。コウノトリもスプーンのようになった嘴が小さな瓶の口にぶつかって入りません。 実は、最初の戦いの後、狐は細長い瓶の中の物が食べられるように口を縛って食べる訓練をしたのでした。その努力の結果、アリクイのような鼻になることが出来たのです。一方、コウノトリも平らな皿からスープが飲めるように、努力をしました。が、どうしても出来ないものですから、つい最近整形獣医の所へ相談にゆきました。「一回整形すると元にもどせなくなるけれど、宜しいですか?」コウノトリは首を縦に振りました。二人は、自分達のして来たことを話合い、こんな馬鹿なことしなけりゃよかった、とお互いを慰め合ったそうです。 

教訓。自分の得意でないことを無理してやると、人生損をしますよ。

 


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RISUCO

あけましておめでとうございます!
今年もどうぞよろしくお願いいたします^^*
by RISUCO (2013-01-03 13:47) 

mimimomo

こんにちは^^
大変面白く読ませていただきました。
世の中には、無理をしてなさる方もいらっしゃいますものね。
気をつけておかなくては、わたくしも^^
by mimimomo (2013-01-03 17:52) 

扶侶夢

新年おめでとうございます。
本年もどうぞ宜しくお願いいたします。m(_ _)m

日々の精力的で若々しい制作活動に大変感心しております。今年はどのような展開になるのでしょうね。
by 扶侶夢 (2013-01-03 18:14) 

Enrique

身につまされるお話でした。
仕返ししてやろうと思ってそれに成功しても,結局は自分の首をしめていた。お話にされると良く分かりますが,ムキになったり,欲の皮がつっぱっていたりすると,ままやってしまいそうなことです。あちこちにありそうなお話です。
by Enrique (2013-01-03 21:01) 

Kanna

アヨアンさんあけましておめでとうございます^^
今年もどうぞよろしくお願いいたします^^
お話、面白いですねー^^
アヨアンさんの描かれた絵と共に拝見すると、より面白いなと思いました^^
そしてコウノトリが整形をして…のくだり、確か以前にUPされたお話で、整形外科?の動物のお話ありましたよね。
そのお話の場面をちょっと思い出しました^^
自分の出来ない事を無理にする、背伸びをしすぎると痛い目に遭う、これは確かに本当だと思います(笑)
by Kanna (2013-01-03 21:54) 

唐糸

おもしろい、です!

 本年もどうかよろしく。
by 唐糸 (2013-01-03 23:59) 

旅爺さん

明けましておめでとう御座います。
この話は知ってましたが、改めて聞くと自分でも 反省 しなければ、ですね
by 旅爺さん (2013-01-04 05:42) 

青い鳥

『今様伊曾保物語 その1』、とても面白かったです。
知っている原作がアヨアン・イゴカー様によってどのように変えられるのか、
興味を持って読ませて頂きました。
続編も期待しています。
伯父様、旧制松本高校のご出身なのですね。
医学部にご進学なさったのでしたら理系ですからまさに大先輩でいらっしゃいます。
私は県キャンパスの校舎には1年間しかいませんでしたが
あの雰囲気が大好きでした。
新校舎の旭キャンパスの校舎は綺麗で快適でしたが
県の森の雰囲気とは程遠いので味気なかったです。
by 青い鳥 (2013-01-04 19:22) 

山子路爺

遅れ馳せながら、明けましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いいたします。

by 山子路爺 (2013-01-07 17:20) 

yuyaさん

あけましておめでとうございます。
今年も作品を楽しみにしています。
by yuyaさん (2013-01-09 12:35) 

lamer

イラストが面白くて笑ってしましました^^♪
自分の得意な事は食べる事くらいですが〜〜〜ぁ^^。
気をつけます。
by lamer (2013-01-10 10:39) 

youzi

こんばんは♪ いつもありがとうございます。
このお話、小さい時に読みました。
意地悪されて、意地悪し返しちゃう・・・。
鶴の表情もとてもいいですね。
by youzi (2013-01-11 22:54) 

アヨアン・イゴカー

めもてる様、ChinchikoPapa様、RISUCO様、ビタースイート様、doudesyo様、kurakichi様、gigipapa様、mimimomo様、扶侶夢様、ミスター仙台様、kinkin様、glennmie様、krause様、野うさぎ様、Nobuzo様、404様、Rita様、Enrique様、唐糸様、flutist様、旅爺さん様、carotte様、lamer様、くらま様、マチャ様、Mineosaurus様、schnitzer様、SILENT様、optimist様、にすけん様、アリスとテレス様、moz様、silverag様、海を渡る様、りんこう様、rie-klavier様、やってみよう♪様、sun-high様、ぼんぼちぼちぼち様、山子路爺様、suzuran6様、emiru様、水郷楽人様、駅員3様、kingfisher様、orange-beco様、youzi様、
兎座様、miffy様、はなだ雲様、kiyo様、caveruna様、Halumi様、月夜のうずのしゅげ様
皆様nice有難うございます。
by アヨアン・イゴカー (2013-01-14 00:26) 

アヨアン・イゴカー

RISUCO様
今年も可愛い栗鼠ちゃんたちの写真楽しみにしています。
宜しくお願いします。

mimimomo様
人をちょっと出し抜くと言う小さな目的のために苦労するのは、空しいことかも知れません。

扶侶夢様
ある程度書きためたものも纏めたいとも思っていますが、新しいものも作り続けないと、何だか矢鱈に空しくなってきます。

Enrique様
仕返ししてやろうと言うエネルギーは、もっと人の役に立つことや、自分自身のために使ったほうがよさそうですね。

Kanna様
今年も宜しくお願いします。
この『伊曾保物語』はいくつも書いて、絵本のようなものにしたいと思っています。

唐糸様
宜しくお願いします。
面白いと思って頂き、嬉しいです。次の話は、面白くない(愉快ではない)かもしれません。どうしても、社会や職場のことを考えながら、出汁にしようと考えているからかもしれません。

旅爺さん様
今年も宜しくお願いします。
人に仕返しをしようなどとすることは、自分の人間を小さくするだけですね。

青い鳥様
今様と言うことになりますので、今風にしようとあれこれ考えるのですが、なかなか時間が掛かります。
伯父は、あの松高時代が本当に大切だった様です。当時松高の教授だったドイツ文学者の手塚富雄先生にケストナーの『点子ちゃんとアントン』を教材としてドイツ語を学んだそうです。

山子路爺様
今年も宜しくお願いします。

yuya様
yuyaさんは、新しい絵の方向へ進んでいるように感じます。
今年も宜しくお願いします。

lamer様
狐やコウノトリの目付き、ちょと説明的でしたが、双方を意識させて描いてっました。コウノトリの動作も、随分漫画的に説明的ですが、これもありかと。

youzi様
イソップ物語、いろいろありますが、短い話でも、随分教訓めいていて勉強になります。私の持っているAesop's and other Fables(Dent/Dutton版)の話の中には、インドの説話も入っているので、ちょっと驚きました。




by アヨアン・イゴカー (2013-01-14 00:58) 

sig

こんにちは。
トップの「高慢ちきな狐」の表情、最高です。
by sig (2013-01-21 16:22) 

アヨアン・イゴカー

さとふみ様、ミモザ様、そらへい様、tamanossimo様、sig様
皆様 nice有難うございます。

sig様
有難うございます。実は、私もこの狐のずるそうな顔、結構気に入っております。
by アヨアン・イゴカー (2013-01-21 23:50) 

楽葉サンタ

ご無沙汰しています…

変化球のオチが楽しめました
ぜひシリーズ化してください
 このお話の原話が表紙になっている講談社の絵本を
思い出しました…(50年以上前のことですが)
 
 ぼくもイソップを下敷きにした何かをやってみたいものです。

いつもアヨアンさんには触発されてばかりです…
by 楽葉サンタ (2013-01-22 16:47) 

アヨアン・イゴカー

楽葉サンタ様
オチの部分、少しは捻りたいのですが、なかなか思いつかず、苦労しています。そこで、思いつくまま書いてしまう以外に手はないだろうと、半ば居直っております。
by アヨアン・イゴカー (2013-01-27 20:13) 

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