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弦楽四重奏曲 第8番第2楽章 [音楽]

 今日は図書館へ日高敏隆著の『チョウはなぜ飛ぶか』『人間はどこまで動物か』『動物の体色』『ミジンコの都合』の四冊を返却して来た。そして、文庫本2冊と真木悠介著『自我の起原』(愛とエゴイズムの動物社会学)と言う本を借りてきた。棚を物色している時に思索社版コンラート・ローレンツの本があり、その最後にローレンツの他の著書が紹介されていた。『文明化した人間の八つの大罪』とか言う本であった。借りたくなったので検索機で調べてみるが、この著書はこの図書館には所蔵されていなかった。約20年前に出版された本であった。8つの大罪は、増えすぎた人類、環境の改造などである。借りたいと思ったときに本があったことのない図書館である。
 以前も勝小吉の『夢酔独言他』(東洋文庫)がどうしても借りたいと思ったことがあったが、検索上図書館にあるが、戻ってきたことはなかった。不心得者が失敬していたに違いない。或いは、小吉の大ファンになって、返したくなくなったのかもしれない。私は、たまたま古本屋によった時、この本をみつけ、それも格安で、欣喜雀躍した。読んでみたら、予想通り、破天荒な男の、実に無責任な自伝であり、自分のようになるなと勝海舟に戒めているのである。痛快、愉快な剣豪であった。自分とは対極にいるが、一度はこんな豪快な生き方をしてみたいと思わしめる「人物」であった。
 
 今日は、ついでに貸し出しはしていない、閲覧専用の絵巻の本を何冊か見た。私は図書館に来ると、時々、立ったまま大型の本を台の上に置いて眺めている。華厳経の絵巻、鑑真和尚の東征絵巻などを見た後に、『伴大納言絵巻』を見た。これはすごい傑作である。他の絵巻が説明的なものであるのに対して、これはあきらかに芸術家の見事な絵筆による仕事である。構図の見事さ、人々の個性の描き分け、応天門炎上の炎の表現の見事さ・・・舌を巻く。こうやって絵巻物をいくつか見た後にこの作品を見ると、これは他の水準をはるかに凌駕している。私は絵巻物が大好きである。

 ところで、折角なので、前回借りた日高先生の著書の話を少しすると、日高先生と坂田明の対談『ミジンコの都合』が最も楽しめた。しかし、もうこれは坂田氏の本である。(だから、日高氏は坂田氏のことは「嫌い」である、と後書きで述べている。面白すぎるのである、学者みたいに真面目でないために。)題名からして素晴らしい。カラスの勝手と同じ発想であろうか?
 私が感銘を受けたのは広島大学の先生のユーモアである。先生はある時「君、トリクソン持ってきて。」と坂田氏に言う。「トリクソン?」「あぁ、鶏糞だ。」この単語はTryxonと綴るのである。Torikusonと綴らないところに、教養の片鱗が垣間見えて心憎い。妻にこのトリクソンの話をしたら、大いに受けた。Equixon或いはUmaxon,Canixon或いはInuxon, Bovisxon或いはOxxon。これだけの言葉が出来た。ちなみに、1972年の大統領選挙にまつわるWatergate事件で辞任に追い込まれたRichard Nixonは、語源的には肉食人間の末路である。占い師藤田少女姫(フジタコトトメ)が、ニクソンと言う名前には「ソン=損」が入っているので、あまりよい運勢ではないと言ったそうだ。

  閑話休題。弦楽四重奏曲第8番の第2楽章を録音したので、発表いたします。


 
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doudesyo

おはようございます。
博識ですね。すばらしいです。これだけ図書館で楽しめたら幸せですね。美術史的(日本美術史)に「伴大納言絵巻」は重要です。四大絵巻ともいわれてもその躍動感が他とは違うと思っています。時折、時代には天才がいますが、こういう文化レベルの、人物だけではなく時代も大切にしたいと思っています。
弦楽四重奏曲第8番の第2楽章ですが、音楽的なものは全くの素人の私が初歩的なことを書いてすみません。録音ということは音響的に対策された部屋で、マイク一本?で録音なんでしょうか。それとも個々にマイクを付けてミキサーかなんかで合成?なんでしょうか。弦楽器が絡まるように曲ができているのでどうやって作るんだろうと考えていました。
by doudesyo (2008-06-15 05:28) 

アヨアン・イゴカー

doudesyo様 おはようございます。録音と言う表現は適切ではありませんでした。私はヤマハのXG Works STと言うソフトで書いています。音源はVienna Instruments SEで、自分が演奏している訳ではありません。ピアノは弾きますが、ショパンやドビュッシーやラベル他、好きな作曲家の作品を時々少しずつです。
絵巻物は勿論『信貴山縁起絵巻』や『鳥獣戯画』も好きです。昨日は、見比べる結果になったために、『伴大納言』に圧倒されてしましました。
by アヨアン・イゴカー (2008-06-15 08:11) 

いっぷく

図書館によって借りられる本と貸し出し期間が決まっていますが、
私が東京で借りる場合は5冊で2週間。
ロンドンだと15冊で3週間。できればロンドン並に余裕を持ってくれるとうれしいなと思ってますが、予約がなかなか借りれないというのも困るし、
事情がさまざまでそれは仕方ないかな。
大型本は貸し出しできないのもあるし、買うには値がはるし、置き場所にも困るけど読みたい本はキリが無いですね。
by いっぷく (2008-06-15 11:13) 

すうちい

おっ、日高敏隆選集ですか?「ミジンコの都合」は読んだこと無いな。おもしろそうなタイトルですね。ミジンコ好きとしてはほっておけないなぁ。
「八つの大罪」はおもしろいです。ローレンツは20歳前後に夢中になって読みました。日高氏の訳で。
Nixonには笑いました。
by すうちい (2008-06-17 10:51) 

アヨアン・イゴカー

いっぷく様

ロンドンでは3週間で15冊ですか?図書館の貸し出し数と期間を国別、自治体別に比較し、その根拠を調べると面白いかもしれませんね。

すうちい様
坂田と言う人は、頗る愉快なる人物であります。
エクイクソン或いはウマクソンを喧嘩したりすると姉に投げた小生としては、トリクソンの話に異常な親近感を持ちました。

「八つの大罪」は是非読んでみようと思います。


by アヨアン・イゴカー (2008-06-18 00:30) 

AWFUL

「Tryxon」、大学の先生が顔色ひとつ変えずにジョークをひり出す様が浮かび、一人ニンマリしてしまいました。
図書館や古書店は、時系列を越えて、思わぬ情報に出会える独特な場所ですね。
by AWFUL (2008-06-18 23:05) 

アヨアン・イゴカー

AWFUL様
私は知識人の諧謔の精神が好きです。影響されやすい人間なので、どうしても発展編を考えずにはいられません。
by アヨアン・イゴカー (2008-06-20 00:31) 

SAKANAKANE

初めまして。拙ブログにご訪問&nice、ありがとうゴザイマシタ。
すうちいさんの所のコメント欄でも、お見受けしておりましたが、四冊の本、とても興味を惹くタイトルですね。最近はめっきりと本を読めなくなってしまい、寂しい思いをしております。
ローレンツも、興味が有りながら、未読です。
絵巻物、なるほど、図書館でそんな楽しみ方も有るんですね。
昔、「ダットソン」と言うのが、損が入っていて宜しくナイとの理由で、「ダットサン」と言う名前に変わったという話を思い出しました。
by SAKANAKANE (2008-06-21 01:35) 

mompeli

「ミジンコの都合」 ええその題名だけで本を手に取ってしまいますね(笑)
>借りたいと思ったときに本があったことのない図書館である。
これこちらの図書館にもそのまんまあてはまります。本だけじゃなくてあらゆるものにあてはまるかも。何かしらはあるけれどほしいと思ったモノはなかなか手に入らない。
ちなみにキャンベラの本貸し出しは2週間で10冊です。
by mompeli (2008-06-23 09:21) 

アヨアン・イゴカー

SAKANAKANE様
ダットサンは「脱兎のごとく走る」とサン(サンの意味不明)との合成語だと言うような説明を聞いた気がします。ダットソンだったのですか、最初は。

mompeli様
キャンベラは2週間で10冊ですか。お国柄があって、面白いですね。
by アヨアン・イゴカー (2008-06-24 01:00) 

miyoko

ご訪問ありがとうございました。
私は、たしか『信貴山縁起絵巻』をテレビ番組で紹介されている
のをみて?絵巻物って動きがあって楽しいんだなと思いました。
『鳥獣戯画』、私も好きです。
by miyoko (2008-06-29 12:38) 

アヨアン・イゴカー

miyoko様 絵巻物を見ていると、電気もなく、水道も、ガスもない時代の人々の暮らしぶりを想像して楽しくなります。大変だったろうとは思いますが、刺激が少なかった分だけ、あらゆるものに対する感動も大きかったと思います。
by アヨアン・イゴカー (2008-07-01 01:40) 

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