SSブログ

本をまた借りてくる [日記・雑感]

 昨日は本を返却しに行く。読む時間を確保しないので、遅くなってしまう。返したのは鈴木公雄著『考古学入門』、新渡戸稲造『武士道』、『デリダとの対話』の三冊。
 『武士道』は読んだ積りになっていたのだが、借りてきてちゃんと読んだら、読んでいなかったことがよく分かった。私は、この程度の読み方の人間なのである。noblesse obligeについての言及、武士の子供の躾として生首を見に行かせることがあったことや切腹の描写の引用など、大変興味深く読んだ。切腹は自殺か他殺か。切腹せざるをえない状況に追い遣られるのであるから、自殺とは言い難い。が、手を下すのは自分である。と言いつつ介錯人がいる。新渡戸は介錯人は死刑執行人executionerではない、そんな地位の低いものではなく、信頼できる身内である、と述べている。そして、ソクラテスが毒ニンジンの杯を手にして粛然と、恬淡と、終焉を迎えたことと対比している。
 しかし、やはり明治男なので、その考え方にもところどころ限界も感じる。時代を超えることは人間にはできないのだと思う。私は、この切腹と言う死に方が嫌いである。美しいとも思わない、正直を言うと。死というものは、議論を停止させてしまう。問題解決に便利だと思う人間もいるだろうが。喧嘩で埒が明かなくなって「おまえなんか、死んじまえ!」と言って、相手が本当に死んでしまったら、こんなつまらないことはない。
 『考古学入門』は大変勉強になった。興味があるものの、殆ど考古学の本を読まずにいた。このソネットブログに五十嵐彰さんが記事を書いているので、その影響を受けたのである。昨日、早速、坂田俊文著『宇宙考古学』、松井章著『環境考古学への招待』の二冊を借りてくる。
 昨日は、上記の二冊以外にオイゲン・ヘリゲル(Eugen Herigel1884-1955)述『日本の弓術』、『キケロー弁論集』、宮本常一著『家郷の訓』も借りてくる。どの本も殆ど衝動借りである、いつもどおり。だって、本は見ているとどれも読みたくなるんだもん。
 『日本の弓術』は早速読んだ。柔道、空手道、合気道と同じように、弓道も哲学的である。的を射るのではなく、的と自分とを一体化させるのだ、と言う教えは、まさに仏教的である。阿波研造氏(1880-1939)は、麹業佐藤家の長男として生まれ、14歳の頃に漢学を習い、18歳にして漢学私塾を開いた。20歳で麹業の阿波家の婿養子となる。家業の傍ら武術に精出し、弓、剣、柔道、居合、抜刀術、薙刀などを指導研究。合気道の植草盛平のように、武芸の達人だったのであろう。人物、偉大な人間は他者を感化せずにはいない。
 我が家は曹洞宗であるが私は禅宗が嫌いである。いろいろ調べていて嫌いになった、本物の、本来の仏陀の教えではない、と思った。しかし、今回ヘリゲルの『日本の弓術』を読み、『無門関』を再開しようと思う。
ところでヘリゲルは聖フーベルツスが角の間に十字架をつけた鹿に会った場面の絵を、阿波氏に贈る。弓道の精神と西洋中世の神秘的な部分に共通点を見つけたのであろう、と小町谷操三氏は『ヘリゲル君と弓』と言う後書きの中で書いている。一般的には言葉、ロゴス、論理、論理的思考を重要視しているように思われる西洋人の中にも、こうした言葉を超越した部分もある、と言うことをヘリゲル氏は言いたかったのだろうと私も思う。
 ちなみに、Wikipediaでは聖フーベルツスは下記のように紹介されている。
Saint Hubertus or Hubert (born c. 656 to 658, probably in Toulouse; died May 30, 727 or 728 in Tervuren near Brussels, Belgium), called the "Apostle of the Ardennes" was the first Bishop of Liège. Hubertus is a Christian saint, the patron saint of hunters, mathematicians, opticians and metalworkers, and used to be invoked to cure rabies. Saint Hubert was widely venerated in the Middle Ages. The iconography of his legend is entangled with the legend of St Eustace.
 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
  Unfortunately, his wife died giving birth to their son, and Hubert retreated from the court, withdrew into the forested Ardennes, and gave himself up entirely to hunting. But a great spiritual revolution was imminent. On Good Friday morning, when the faithful were crowding the churches, Hubert sallied forth to the chase. As he was pursuing a magnificent stag or hart, the animal turned and, as the pious legend narrates, he was astounded at perceiving a crucifix standing between its antlers, while he heard a voice saying: "Hubert, unless thou turnest to the Lord, and leadest an holy life, thou shalt quickly go down into hell". Hubert dismounted, prostrated himself and said, "Lord, what wouldst Thou have me do?" He received the answer, "Go and seek Lambert, and he will instruct you."
 聖フーベルツスは狩猟者、数学者などの守護聖人である。面白いのは狂犬病治癒のために彼の名が唱えられたことである。改悟したのが聖金曜日と言うのも、不自然だが、本当ならば絵にもなるし劇的でもある。
 
 『キケロー弁論集』は例の有名な「カティリーナ弾劾」が一つ目に入っている。これを図書館で立ち読みし、借りることにした。シェークスピアの『ジュリアス・シーザー』にブルータスとアントニウスの名演説が出てくるが、当然ながらこういう下地があった訳である。今回借りなければ、またいつ私の目に留まるか分からないので、借りた。


nice!(9)  コメント(2)  トラックバック(0) 

nice! 9

コメント 2

mistletoe

こんばんは。
オイゲン・ヘリゲルは『弓と禅』を読みました。
なぜならば・・・この本の版元に勤めていたからです。
武道を通して日本の精神世界について書かれた本・・・
訳がイマイチで読みづらかった記憶があります。

新渡戸稲造は食わず嫌いで読んでおりません。
私も近代における”切腹”という死に方が嫌いです。

デリダは棚の肥やしに数冊・・・
by mistletoe (2008-04-14 18:51) 

アヨアン・イゴカー

mistletoe様 『弓と禅』。面白そうな題名ですね。ヘリゲルはもし図書館に置いてあれば、その内読んで見たいと思います。
生きることは自分の存在意義の探求の旅でもありますが、日本人とは、日本文化とは、真に日本的なものとは、など考えるべきことは沢山あります。
by アヨアン・イゴカー (2008-04-16 09:27) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0