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ベニヤ板の強度 [随想]

 今日は、昨日に引き続いてベニヤ板を30センチ以下に解体した。このようにしないと、粗大ごみ扱いになるためだ。解体しているのは25年以上も前に作られたのエレクトーンと、拾ってきたステレオセット、これも25年以上前に作られたもの、である。前者は中古品を、ピアノの調律師が「エレクトーンが中古であるんですが、只で引き取りませんか?」と言うので、頂いたのである。得をしたような気になって喜んでいたが、暫くして使えなくなってしまった。電気回路のどこかが故障してしまったのである。蓋を開けてみたら、電気系統の部品は埃だらけで、とても修理して使おうとは思えなかった。音の出ないエレクトーンは、鍵盤を外し、粗大ごみとして出して、外枠はYAMAHAのシンセサイザーV50を置いて使うことにした。鍵盤楽器の台としてはうってつけの高さ、大きさだった。しかし、シンセサイザーも2000年頃にXG WORKSとMU2000を購入してからは全く使わなくなってしまった。無用の長物になってしまった。
 件のステレオセットは、姉が勿体無いからと言って拾ってきたものを、「取っておけばいいよ。」と言って、我が家へ持って来た。あの時いらないと言っておけば、今回処分する手間は省けたのであったが。後悔先に立たずで、家の空間に余裕がある時は、後でどれほど邪魔になるかなど、想像だにできないのだ。現在は、書物以外は、基本的に貰わないことにしている。
 さて、そのエレクトーンの外枠とステレオセットの解体であるが、これは存外日数のかかる作業になってしまった。解体する空間も、ベランダしかないし、舞台用のなぐり(金槌)と小鍛冶(こかじ、と呼んでいたが、こう表記するのではないか)、それと家を建てる時に購入した掛矢(かけや)しかない。ゆっくりと、自分が逆襲にあって解体されないように注意しながら、分解してゆく。開始して、既に1ヶ月半は過ぎている。
 今日もベニヤ板を小さく分解していた。そしてふと気付いたのは、ベニヤ板の強度の差である。通常コンパネと呼ばれる10ミリメートル以上の板は、小鍛冶となぐりで比較的簡単に剥離させることができる。このエレクトーンの外枠も厚手のラワン材も使用しつつ、その外には厚手のベニヤ板を使用している。それを掛矢で叩いて外す。そして、厚いベニヤ板に小鍛冶の切っ先(これは鑿のように楔状になっている)を立て、反対側をなぐりで叩き、隙間を作る。一部が剥離したラワン材の薄板は、面白いように剥がれてゆく。雨水がトタン屋根を伝わるくらいの勢いである。
 ところが、ステレオセットのベニヤ板は8ミリメートル位の厚さしかないのに、なんと強固に接着されていることだろう。ラワンの薄板が、ボンドでしっかりと固定されていて、まるであたかも縦横交互に張り合わされた薄板が、天然の素材であるかのような強さである。こんな強度のあるベニヤ板にはお目に掛かったことがない。普通はこの程度の厚さのものであれば、すぐに折れるものである。しかし、この板は違った。私の全体重(多分60キロ位)を掛けてみるが、曲がるだけで折れない。この板を分解するのに、結局5分位かかってしまった。ほんの50センチ×70センチほどの板であるが。
 このベニヤ板を見て思った。以前の日本人は、好い仕事をしていたのだなぁ、と。職場では、安い文房具を購入している。注文するとすぐにくるのが特色だ。腹が立って仕方がないのが、ホッチキスの針とセロファンテープである。安いホッチキスの針は角度が悪いとすぐに針が曲がる、折れる。また、セロファンテープは、使おうと引っ張ると斜めに裂ける。このような不良品は今まで見たことがない。折れるホッチキスの針は裂けて使い物にならないテープ?!一体、企業はどこでこのような不良品を大量生産させて値段を落としているのだろう。情けなくなる。安ければ多少品質に難点があっても良いと言う発想になっているのだろうか。
 
 人間は、いつ、どこで、どのような仕事をしていても、誇りとこだわりは亡くしてはならない。
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にすけん

 音響機材に使われている古い合板は、確かに現代のものに比べると非常に強固にできています。
 現代の技術で同等の強度を出す手段もないわけではないと思うのですが、環境問題で使用できる接着剤や処理剤に制限がかかることもあるようですね。もちろん総合的には低コスト性が最優先されてはおりますが・・・

 がっちり作って、こまめに直して、孫子の代まで。やっぱりこれでしょうか。
by にすけん (2008-03-31 10:28) 

アヨアン・イゴカー

xml_xsl様nice有難うございました。

にすけん様、nice & コメント有難うございます。
昔の音響教材の強度が高かったのが、接着剤や処理剤にも理由があったと言うことは知りませんでした。情報有難うございます。確かに、環境に悪影響を与えてしまうような化学薬品は使ってはなりません。

今では変わってしまったと思いますが、昔はドイツやイギリスの頑丈に作られた機械やおもちゃが素晴らしいと言われていました。使い捨てではなく、頑丈な良いものを直しながら使い、孫子にまでも伝えてゆく、そういう文化、気風に憧れたものです。

by アヨアン・イゴカー (2008-04-01 00:51) 

yoku

>以前の日本人は、好い仕事をしていたのだなぁ

残念ながら、だんだん製品も劣化している気がしますね。
すぐ壊れる製品のなんて多いことか考えさせられられます。

by yoku (2008-04-01 06:40) 

アヨアン・イゴカー

>yoku様。 nice&コメント有難うございます。
by アヨアン・イゴカー (2008-04-01 09:31) 

いっぷく

なるほどと思いましたよ。昔のものが古いからといって
品質が悪いのではなくむしろいい仕事をしていた結果というのもありますね。そこで思い出すのが「レンガ」レンガはもろく、壊れやすいというイメージでしたが、これが100年も前のレンガだとコンクリート用ドリルでさえ穴あけが厳しいと大工さんがこぼしていたのを思い出します。
by いっぷく (2008-04-05 18:35) 

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