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劇団木馬座の思い出 補遺 [劇団木馬座の思い出]

 演出家の小森先生の息子さん、samohanさんに劇団木馬座が制作したビデオ、それをDVDにしたものを頂いたのだったが、その一部を写真としてご紹介したい。残念ながら静止画像にできないので、綺麗に撮影できなかったけれども。
mokubaza-pinocchio DSCN3197.JPG 入社した年の冬公演の上演作品は『ねむり姫』『シンデレラ』『ピノッキオ』に決まった。『ピノッキオ』については全て過去に上演したものが残っていたが、お面の一部、小道具の一部の制作、動物たちの大サーカスの出し物の全面的な作り直しが決まった。ピノッキオの仮面は私がほぼ土台を作り、最終的な仕上げをO氏が行った。ゼペット爺さんの仮面はO氏が制作したのだったが、制作者本人によく似ていると言われた。「Oちゃん、何、自分の顔作ってんの。」と制作室の先輩に言われていた。Oさんはピノッキオの頭髪を荒縄で作った。初演の時も頭髪は荒縄であったが、ずっと細い、高級な素材だった。同様の物が手配できなかったので、このような髪型になっている。写真で見る分にはよいが、動いている時にはもう少ししなやかな方がよかったかもしれない。
 嘘をつくと鼻が伸びる場面では、何か新しい工夫はないかと言われたが、素材その他の知識が不十分で、結局過去のものをそのまま使うことになった。バッテリーで動く自動車用アンテナのモーターを使ったので、面は結構重量があり、バッテリーを大道具の裏に置いてコードを繋いだりしたので、この場面のみの吹き替え用仮面ではあったが、演技に苦労していた。
 ちなみに、私が代案として考えたのは空気を送り込んで、鼻を伸ばす方法だった。が、よい素材が思いつかなかったので、頭の中だけの案になってしまった。
 今ならどうするか。恐らく、伸びる部分の鼻を軽い紙やビニールの筒にして、役者が息を吹き込んで鼻を伸ばす方式にするだろう。引っ込むのは最初から鼻の先頭にゴム紐を取り付けておいて動力にする。吹き込んだ空気が逆流しないように、弁が必要になるのと、そのラチェットのように一方向にのみ作動する弁の開放方法もなかなかむつかしい。それは紐か何かで、手で操作ができる。弁についた紐をゆっくりと引いて空気を徐々に開放すると、鼻が自然に元に戻るだろう・・・などと想像するのは、やはり今でも楽しい。
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kinkin

木馬座と言えばケロヨンですね、子供の頃良く見てました。
by kinkin (2017-03-04 17:25) 

Enrique

自動車のアンテナ用モーターとは大掛かりです。とはいえ,空気式だと空気の始末が大変と,なかなか悩ましいところではありますが,楽しい悩みです。
現在では産業用の小型の電動や空圧のアクチュエータもあるとは思いますが,やはり電源やエア源,制御部の課題は共通でしょうか。
by Enrique (2017-03-05 06:36) 

Kanna

演技をされている方はもちろんの事、道具を制作されている方々も本当に色々と悩まれていたのですね!(*^^*)
個人的な制作ならば、多少のミスは「まあ良いか~」と済ませられますが(笑)、劇団の場合はたくさんのお客様に見て頂く訳ですから、演技をされる方の小さな動きも、演出用の道具達の完成度も、やはりプロ並のものを要求されるのではと思いますし、楽しい反面、これは大変だな~と思いました(笑)
前記事のアヨアンさんからのコメント、面白く拝見させて頂きました!^^
シンデレラが2人、このアイデアにも驚きましたが、それがお客様にバレてしまったというのは確かにヒヤヒヤでしたね!^^;
子供達の夢を壊さないように公演するというのも、なかなか難しいものですね!(笑)
by Kanna (2017-03-07 10:23) 

あさみさだむ

たまたまこのブログにたどり着きました。
私も多少木馬座に関わっていたので懐かしく拝見しました。
ケロヨン武道館、人形劇ではない木馬座公演「リンカーン」(読売ホール)その他色々やりました。
初演のピノキオもスタッフで参加しています。
鼻ののびる吹き替え用の面は不具合が多く苦労しました。
旅公演の舞台監督として「赤ずきん」を担当していました。
懐かしい青春時代の思い出、スタジオ地下の工房の様子、昨日の事のように思い出しました。(あの面の匂いも・・(笑))
感謝です。
by あさみさだむ (2017-03-09 20:40) 

samohan

舞台写真ありがとうございます。元の動画も決して鮮明とはいえず、良く撮られていると思います。

「ピノキオ」の演出は早野寿郎先生で、親父(小森安雄)は直接はこの作品に携わっていなかったようですが、私もこの作品を客席から観ています。4歳位でしたね。
母の友人とその息子さんの「まさと君」という、私と同い年の子どもと一緒でした。
目鼻立ちの整ったその子が、のちの俳優「萩原聖人」になるとは、知る由もありません。

彼の母は、これより少し前の木馬座公演「こじき王子」では貴族の声を演じており、当時のパンフにも本名でキャストに名を連ねています。
もしかしたらこの「ピノキオ」でも誰かの声で参加していたかもしれません。
残されている木馬座のパンフには、何故か俳優・声優ともにキャスティングが記載されているものが少いのが残念ですね。スタッフはかなり細かくラインナップされているのですが。

アヨアンさんも以前お書きになられておられましたが、「ピノキオ」の舞台美術は後の文化功労者である安野光雅さんでしたね。
絵本「ふしぎなえ」が出版されたのが1968年とのことなので、このころはまだ絵本作家として精進されている頃でしょうか。

長々と失礼しました。
by samohan (2017-03-11 04:34) 

momotaro

何か課題があってあれこれ考えるのって楽しいですよね、期限があって迫られていると苦労でもあるわけですが・・・
by momotaro (2017-03-11 08:12) 

アヨアン・イゴカー

kinkin様、、めもてる様、森田恵子様、夢の狩人様、たかおじー様、mimimomo様、ChinchikoPapa様、扶侶夢様、ビタースイート様、banpeiyu様、シラネアオイ様、kazg様、コミックン様、nandenkanden様、かずのこ様、えれあ様、catotte様、tommy88様、山子路爺様、lequiche様、Mitch様、majyo様、yam様、せとっこ様、ぼんぼちぼちぼち様、ねじまき鳥様、caveruna様、kohtyan様、トックリヤシ様、momotaro様、schnitzer様 
皆様nice有難うございます。
by アヨアン・イゴカー (2017-03-11 16:03) 

アヨアン・イゴカー

kinkin様
木馬座で最も有名だったのはやはりケロヨンですね。
私が入社したのは、木馬座が武道館の公演で大赤字を出して、社長が交代してから数年後のことになります。

Enrique様
機械的に考えると制御と言うことになりますが、舞台の場合アナログな仕掛(指で押さえる、歯で噛んで押さえる等々)のほど、失敗が少なく見ばえも良いように思われます。歌舞伎の仕掛などなど。想像図はあるのですが、現実化するのは、試行錯誤になります。

Kanna様
制作をしている時は、しばしば図鑑やら写真に頼りました、本物らしく作らなければならないものも多いので。皆制作中は気が済むまで作業に従事していました。おやゆび姫の仮面を制作していたHTさんは、冬で寒かったこともあって、一度塗った塗料が乾かず、表面に微かな凸凹ができてしまいました。その時、退社時刻になったころ、全てをシンナーで落とし始め、一人深夜まで残業して塗りなおしをしていました。翌朝出勤してみると、綺麗に色が塗られていました。彼は自分の作った姫の面を見て「どうだ、可愛いだろう」と言いました。あどけなく、可愛らしいお面でした。

あさみさだむ様
ご訪問とコメント有難うございます。
「ピノッキオ」は、木馬座が創設されてから早い段階(1960年代)で、東横ホールだったかと思いますが、母に連れらて観に行きました。
「赤ずきん」は、家内が観に行ったことがあり、主題歌も覚えています。都内の公演ですから、あさみさだむ様が舞監の時ではないようですが。
ピノッキオの鼻が伸びるほうの面は、モーターが入っていて重かったですね。入社してこの仕掛けを見た時、よくできていると思いました。
ちなみに、当時競合していた劇団Hの「ピノッキオ」の鼻は、ピノッキオが上向いてベッドに横になっていると、鼻が垂直に伸びると言うもので、大分がっかりしました。もっと別の発想を期待して行ったものですから。その後は、変えたのかもしれません。

samohan様
確かに、パンフレットや台本に出演者と声優の名前が掲載されていなかったのは残念です。予算の関係で、その分のページを割愛してしまったのかもしれませんが。特に、初演の時などは、出演者・声優の名前を台本に入れて欲しかったです。新井勢津郎さん(「ピノッキオ」では火喰い親方)、堀絢子さんなどが幾つもの大切な役を担当されていたのに。

momotaro様
生物の進化も、環境の変化が重要な要素になっていると思いますが、一人の人間の進化も環境の変化(期限のある課題・解決すべき問題等々)が必要なのは同じだと思います。何の目標も無くなると、時間の密度が薄くなるような気がします。






by アヨアン・イゴカー (2017-03-11 16:56) 

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