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初台のZaroffへ『乾いた蛾についての考察』を見に行く [日記・雑感]

 今日は4/10~4/19まで渋谷区初台1-11-9にある画廊喫茶Zaroffで開催されている椎木かなえさんの『乾いた蛾についての考察』と言う個展を見に行った。土曜日に行く積りだったが、ちょっとした用事ができ予定を変更し、来週の土曜日にしようと思っていたのだった。椎木さんが本日以降は一旦帰阪することが分かったので、折角なら直接いろいろ話を聞けるように、慌てて今日行くことにした。Happy birthday by Shiiki Kanae.JPG
 左の絵は
 バースデー。
 あなたが始まった、大切な日。
 おめでとう。
 と書かれた『バースデー』と言う絵であるが、今回は出品されていない。雰囲気を紹介するために小さな画集を購入し、彼女の許可の下、写真を撮って公開させて頂いている。
 彼女とは暫く立ち話をしていた。彼女には独特の個性があり、その世界観が自分にも共通するので惹かれているのだと言った。その時どうしても名前を思い出せなかったが、女流画家Remedios Varoのように、椎木さんは既に確立された世界があると思う。Varoとも全く異なるが、彼女が描く世界には一貫性があり、詩があり、物語があり、何かを考えずにはいられない。私は、肖像画や風景画を見ても、物語や詩を思い浮かべることは殆どない。まれに、描かれた風景の余りの美しさに、その場に自分がいるかのような、画家と一緒にその感動を共有しているような気分になることはあるが。
 画廊Zaroffでは、私は彼女の絵からは詩を書くような気分にはならないと言ってしまったが、帰宅後小さな画集を眺めていると、あれこれ物語りのようなものが浮かんできそうな気がしてならない。好い絵とはそうしたものだと思う。強迫観念のように付きまとい、その作品達に回帰することが常習化する。
 ところで、私は最初喫茶店の中に絵が展示してあるものと思い、喫茶店に入ると、誰も客のいない店内に、にこりともしない男性が一人いるのみであった。「椎木さんの個展はこちらでしょうか?」と言うと、面倒くさそうに店の端にある扉を開けて「二階が展示場です。土足厳禁ですから、靴をその辺で脱いでいってください!」と言う。こういう人物、私は嫌いではない。偏屈や唐変木、朴念仁、これらすべて私の守備範囲である。ぶっきらぼうではあるが、椎木さんの絵を見て気に入ってくれて、個展が実現したとのことであった。
 絵は6,7枚あったと思う。『乾いた蛾についての考察』と絵との関係については、あれこれ所感を話した。南天の枝が描き込まれていて、それがどこか日本画的な雰囲気も醸し出しているように感じた。使用する筆の本数、制作時間などについてもあれこれ質問する。描き方については、かなり、椎木さんと考え方が似ているので、愉快になる。頭で考えずに、感覚に任せる手法、超現実主義的な手法、敢えて描ききらない、即興的に描いてみる、偶然発生した物を大切にして絵の一部に追加してゆく等など。私は、自分の音楽の作り方が如何に絵を描く時の方法に似ているかを説明する。主たる旋律を書いた後に、対旋律や和音を付加して行く。何をどの程度付加するかは、全く感覚頼りであることも。自分にとって音楽と絵画は不可分であることも。
 久々に芸術について話し合い、有意義な時間を送ることができた。
 個展は4/19(土)まで開催中。少し変わった絵のお好きな方にお薦めします。(変わってない、と画家は言うかもしれませんが。)場所は下記のurlをご参照下さい。
http://www.house-of-zaroff.com/ja/gallery_2nd/now/index.html
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Enrique

確かにアヨアン・イゴカーさんとも共通するものが感じられます。「乾いた蛾を考察する」発想が面白い,というか,感性に正直な表現者なのでしょう。魅力的な方なのだろうと想像しました。
by Enrique (2014-04-14 07:54) 

tree2

見た瞬間、 Varoを思いだしました。Varoの画集もっています。好きというには肌になじまないところもあるのですが、とても気になる作家です。
今日の絵は、おっしゃるように、Varoのように確立された世界があるように感じます。でも確立されたということは、そこから動かないということでもありますね。
たぶん私は、アヨアン・イゴカーさんの作品がまだまだ動きそうだから、より惹かれるのだと思います。
そういえばピカソやクレーは、生涯、動きましたね。
by tree2 (2014-04-16 11:45) 

Kanna

やはり行かれてましたか^^
アヨアンさん、かなえさんの絵がだいぶお好みのようでしたので、きっと行かれていらっしゃるだろうと思っていました^^
実は私も4月14日に東京に行っていたのですけれど、バスツアーだったものですから、残念ながら立ち寄る事が出来ませんでした^^;
「バースデー」という絵は、別の場所で実物を拝見させて頂いた事がありますが、頭の上のひよこがとても可愛いのですよね^^
かなえさんの絵の中では珍しく動物が描かれている作品なので、私もとても印象に残っています^^
by Kanna (2014-04-18 16:56) 

アヨアン・イゴカー

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皆様nice有難うございます。
by アヨアン・イゴカー (2014-04-19 19:35) 

アヨアン・イゴカー

Enrique様
考え方とか、言葉の選び方とか、普通の人とは異なっていて面白い女性です。インターネットで検索されれば、展覧会に出品された作品等についてのより詳しい情報がご覧になれます。

tree2様
Varoを思い出されたと言うのは、嬉しい驚きです。私は、Varoの本物は見たことはありませんが、それでも彼女の絵は充分に幻想的、超現実的で、私の好みによく合致していると思います。
確立されている世界の魅力、確かにそういうものに惹かれているのかもしれません。
ピカソは時々何を目指したのかが分からなくなり腹が立ちますが、それでも青の時代もキュビスム時代も新古典主義の時代もシュルレアリスムの時代も全部好きです。どれもいかにもピカソらしいと思います。この説得力は何かと考えるに、揺ぎ無い個性なのだろうと思います。

Kanna様
全面的に断然好き、熱烈なファン、と言うわけでもないのですが、にも拘らずどうしても放っておけない画家なのです。あの世界は癖になる世界だと思います。大きな画集があれば、それぞれの絵に詩や物語を書く気になるかもしれません。
人間存在を問うているようでいて、時々そのなかに暖かい諧謔が感じられたり。彼女は分裂思考なのかもしれませんね。
by アヨアン・イゴカー (2014-04-19 19:50) 

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