詩『イグアスの瀧に憧れていた自分を』

イグアスの瀧に憧れていた自分を 

私は

イグアスの瀧に懸かる虹に憧れていた当時の自分を

今の自分が否定するのを知っている

地球の端にあるという

海水が瀧となって落ちてゆくイグアスの瀧を

マゼランと共に見たいと言っていた自分を

南氷洋を砕氷船に乗って横切り皇帝ペンギンを見たいと思っていた自分を

今の自分が許す筈がないのを知っている

 

なんとなれば

あの頃からは随分時間が経ち

特別な冷遇

悲劇的な幸運

屈指の不名誉

自己浄化作用の起こらない

変幻自在でありながら本質の変わらない不平等

の待っている扉を開けてしまったから

カメレオンのように色は変わっても変化しない実体

 

救いがある

現象の実体を果敢にも見極めようとするマドロスたちがいることである

彼らは前途茫洋たる航海に出ている

海の果てを見極めるまで帰国しない決意で

権威を引いて論ずるものは才能を用いるにあらず、ただ記憶を用いるにすぎぬ＊

彼らは本質的でない返答を許さない

裏づけのない、実体のない念仏は許さない

はぐらかされた答えは答えとして認識しない

自分の席を守ろうと

他人と争ったり

他人を謗ったり批判したりするのはおよしみっともないよ

 

と祖母が言った

 ＊『レオナルド・ダ・ヴィンチの手記　上』（岩波文庫）ｐ22

コメント 4

ほの暗い遮蔽空間で祝杯をあげる化け物たち。
本質的な，裏づけがある，実体ある，まっとうな答えとなる答えを求め続けます。
by Enrique (2013-12-16 17:56) 

タツノオトシゴのような不思議な生き物ですね＾＾
この絵はこの詩のために描き下ろされたのでしょうか？
謎めいた絵の世界と詩の世界、その相乗効果によって、後半のくだりの言葉達の印象がより強く感じられますね。
by Kanna (2013-12-16 21:46) 

あんぱんち様、楽天市場売れ筋調査員様、gunpulunner様、くらま様、アリスとテレス様、シラネアオイ様、はせお様、doudesyo様、ken様、般若坊様、teftef様、Mineosaurus様、せとっこ様、kinkin様、ビタースイート様、makimaki様、常武鉄道様、yamagara22様、mimimomo様、carotte様、kurakichi様、tommy88様、青い鳥様、めもてる様、silverag様、えれあ様、森田恵子様、海を渡る様、siroyagi2様、sig様、kemm様、八犬伝様、cafelamama様、ChinchikoPapa様、caveruna様、hirosan様、いっぷく様、youzi様、めぎ様、akanenosora様、シルフ様、Enrique様、t-youha様、Rita様、ぼんぼちぼちぼち様、りんこう様、moz様、CountryBoy様、youzi_x様、山子路爺様、kohtyan様、YUTAじい様、lamer様、さらまわし様、さとふみ様、yu-papa様、e-g-g様、扶侶夢様、兎座様

皆様nice有難うございます。
by アヨアン・イゴカー (2013-12-24 13:37) 

Enrique様
コメント有難うございます。
こっそりと、気付かれないように、自分達のシナリオを書いて進めてゆくのが彼らのやり方。そして、それが成功した時に、こっそりと祝杯を上げているのです。そして、彼らの腹には生まれつき有袋類のように袋がついていて、然るべき段取りで手に入れた金貨を保管して、遊興などに使うのです。
しかし、実際には、「蚊帳の外にいる」と思い込んでいる人々には筒抜けになっているのです。

Kanna様
この二匹の化け物は前々回に描いたリシュヴァン・リンタスとハート・アーリス・ビーアです。この二匹の絵は、四枚位描きました。
詩を、むしろこの絵のために書きました。最初に絵があり、そこから自分の思いを押し広げたのです。
by アヨアン・イゴカー (2013-12-24 13:51)