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東京藝術大学大学院映像研究科アニメーション専攻第三期生修了制作展『空の卵』A Wind Egg [日記・雑感]

 3月20日(火)は、夜9時から始まるアニメーション専攻第三期生修了制作展を、渋谷のユーロスペースへ見に行く。このような夜遅くから始まる作品を見に行くのは初めて。
 合計14作品が上映されたが、私が一番気に入ったのは『空の卵』であった。
 <監督=大川原亮/音楽=羽深由理/サウンドデザイン=滝野ますみ>である。
内容は案内をコピーすると:
小さな養鶏場を営む家族の話。少年は鳥に憧れている。妹はそんな兄を監視している。父は卵を愛している。母は違う誰かを愛していた。家族という切り離せない関係の中で、それぞれが偏りや秘密を持ちながらそこに有り続ける。それは幸せなのだろうか、それとも不幸なのだろうか。
と説明されている。
 味のある、とても美しい絵が、動く。まず、私が思い出したのはドストエフスキーの『悪霊』である。なぜか。メガネを掛けた頼りなさそうな兄を意地悪そうな目をして監視している妹、まるで夫を夫と思っていない妻、無気味な父親。父親は『家族ゲーム』に出てくる半熟卵をチューチュー啜る父親(伊丹十三)をも思い出させる。全くばらばらの家族で、彼らが家族であることは分からない位である。登場する四人が絶望的に孤立しており、互いの存在が恐ろしく希薄である。この人間の存在、人間同士の冷たい、冷え切った関係が強く感じられた。このような人間関係を描くことで、彼は家族愛、人間が人間であることとはどういうことであるのか、問いかけを行っているのかもしれない。
 この作品を見て思い出したのは Ксенія Симоноваクセーニヤ・シモノーヴァの砂絵である。他にもチェコのアニメーションにも共通点があるようにも思われる。
 翌日仕事で疲れるといけないと思い直ぐに帰宅してしまったので、アンケートも書かず、カタログももらえないままになってしまったのが残念である。
 その二日後には「フランスのアヌシー国際アニメーション映画祭にノミネート」。私はこの作品はフランス、イタリア、ドイツ、ロシアなどで評価されそうな気がしていたので、さもありなんと思う。そして、何らかの賞を受賞するのではないかという予感がする。


http://www.facebook.com/l.php?u=http%3A%2F%2Fanimation.geidai.ac.jp%2F03talk%2F&h=VAQHeOELF


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doudesyo

こんにちは。
アニメーション作品は味があっていいですよね。東欧のアニメーション表現は参考になるものが多いように思います。日本での商業ベースのアニメーション造りとは違うからでしょうか。第三期生なんですか、私の知り合いもそこを昨年卒業したので作品上映を横浜でやっていたため見に行けなかった(3月の大震災で予定していたけど無くなったとかも聞いたような?)こともありなんとも感慨深い展覧会です。
by doudesyo (2012-03-25 12:40) 

sig

こんにちは。
記事下のURLをクリックして修了制作展の告知動画を見ましたが、どれもユニークで、見てみたい作品です。すばらしい人たちが育っているようですね。
by sig (2012-03-26 14:44) 

Enrique

三期生修了ということは前期課程ならばまだ出来て丸五年ですか。アカデミックには新しい分野でしょうが、やはり日本には北斎以来の漫画・アニメの伝統がありますから、これの芸術のメディアとしての素地も十分あるのでしょうね。宣伝版のみですが、お目付けの作品含めいい味のある絵がありますね。技術立国ぱっとしませんが、むしろこっちのほうなら他国の追随をゆるさない感じがします。
by Enrique (2012-03-26 20:53) 

アヨアン・イゴカー

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皆様nice有難うございます。

by アヨアン・イゴカー (2012-04-01 15:20) 

アヨアン・イゴカー

doudesyo様
お知り合いがいらっしゃったのですね。
今回の制作展は、私の曲を背景にして卒業制作の時に『アニマル・ダンス』を作った方です。個人的には、彼の作品だけが、一歩抜きん出ていると感じました。作品が上映される前に流れる冒頭のアニメーションも彼が作ったそうです。絵のセンスがよく、彼の作品に似ているが、大学の教授が見本で作ったのかと思っていました。

sig様
疲れましたが、行ってよかったと思いました。考えさせられる作品もありました。上映会の後に教授と学生三人とで「下克上トーク」なるものがありましたが、残念ながら、3人の学生達はトークには向いていないようでした。しかし、それも一興です。

Enrique様
技術立国であって欲しいと切に願います。
『鳥獣戯画』『信貴山縁起絵巻』『伴大納言絵巻』などもかなり漫画的要素が多いですから、日本人は平安時代から漫画的な表現方法を楽しんできた国民なのかしれません。(一般の目に触れるようになったのは近年のことではありますが。)
一つ辛口のコメントをすると、種田山頭火を紙で作ったアニメーションは、もう少し画面と種田山頭火の動きが欲しいと思いました。竹中直人がナレーションをしていたりして、製作体制はしっかりとしているようでしたが。
by アヨアン・イゴカー (2012-04-01 15:41) 

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