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詩集『初恋』の一場面の挿絵 [絵画]

 正直言うと、私の高校時代は暗黒時代だった。大学を卒業して劇団に勤めるまでの7年間は、私の中で暗黒時代だった。そう思っていたのである。
 ところが、一定の年を取ると、その時代が自分が成長してゆく上で、一つの意味を持っていたことがわかって来る。すると、あの頃、嫌だった頃がそれなりに懐かしくなってくるのである。それを書き留めておこうと思って書いた詩、それらをまとめたのが36ページの詩集『初恋』である。『大島』『机に書かれた文字』『文化祭(鰯の埋葬)』そして、既に第一詩集の第一作として書いた『森を歩いた一日』の変奏曲である『七月一日』が最後の詩である。
 今回の挿絵は、その中の『大島』より。

 たった一言を口にしなかったことが
 僕を瞑想的にした
 そして懐古的に
 あの島への航海の途上、僕は真剣にその少女のことを思っていた
 そして、あの厳粛な瞬間の残像が脳裏に焼き付いた後
 幾たび、凝固されてしまったその時を想起したことだろう
 狂おしいほど興奮しながら
 あの暁闇の一時を

ohshima island.JPG 「すべては風の意志なんだ
 雨と雷の意志なんだ。」マドロスは囁く
 水平線上を外航船が滑っている
 天空にはエオルスが見える。

 *全体で8ページの詩の最後の12行
 (1996年7月21日 熱帯性低気圧に変わった台風がもたらした大雨の日曜日)

今日の絵は、竹芝桟橋を離れた東海汽船の船中。彼女が私を見たこの時、時間が止まり、二人の空間が輝いて見えました。周りには同級生が沢山いて、銘々話をしていました。そこへ、彼女と彼氏が甲板から船室に戻ってきました。そして、本の少し離れた所に彼女が座りました。
 拡大して細部が見えるように圧縮率を小さくしてあります。絵を描いたのは昨日8月10日火曜日。使用したのは水彩絵具、クーピーペンシル、ボールペン。


nice!(68)  コメント(11) 

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コメント 11

Enrique

時間が止まった瞬間が美しく再現されました。力作ですがごく自然に描かれているような感じもします。
by Enrique (2011-08-11 06:56) 

Mineosaurus

おっしゃるとおり。人生に無意味な時間はないです。私も振り返って俯瞰し出来る年齢になりましたが、こればかりは過去を持たない我が子を含めた若者に言葉を尽くしても理解してもらえない部分です。
by Mineosaurus (2011-08-11 08:27) 

yakko

お早うございます。
人生に「無意味な時間はない ! 」ということですね・・・
振り返ってみたいと思います。
by yakko (2011-08-11 09:23) 

mimimomo

こんにちは^^
過去を振り返って、それを書き留めておけるというのが素晴らしいですね~
ぼんやり『嫌な時代だったなぁ~』と思うことはあっても、文章と言う形に出来ないです(__;
by mimimomo (2011-08-11 11:44) 

Kanna

良い絵ですね!
水彩絵具を使うと大きな面を一気に塗る事が出来るので、そのせいか、作品からゆとりを感じる事が出来ます^^
作品の雰囲気もさることながら、女性の表情もまた良いですね!
外国の少女のような美しさを感じます^^
アヨアンさんの作風と良く合っていますね^^

by Kanna (2011-08-11 20:38) 

アヨアン・イゴカー

ChinchikoPapa様、夢空様、niki様、スマイル様、しまりす様、Live様、シラネアオイ様、Enrique様、kurakichi様、gigipapa様、glennmie様、くらま様、yokatelier様、carotte様、マチャ様、青い鳥様、yakko様、山子路爺様、もめてる様、mimimomo様、rebecca様、takamovies様、ナカムラ様、galapagos様、krause様、ほりけん様、HAL様、よっちゃん様、りんこう様、pace様、kakasisannpo様、アリスとテレス様、cuarta様、optimist様、八犬伝様、砂漠のラクダ様、palette様、emiru様、chiho様、今造ROWINGTEAM様、ネム様、mphoto様、schnitzer様、konn様、Ren様、ryo1215様、flutist様、じゅん様、SILENT様、Extar12様
皆様 nice有難うございます。
by アヨアン・イゴカー (2011-08-12 13:25) 

アヨアン・イゴカー

Enrique様
この絵、実は描きはじめと完成後で大きく異なりました。最初はもっと全般的に明るかったのですが、E.M.さんと私の空間を作っているうちに、周りをどんどん暗くすることになりました。

Mineosaurus様
振り返って、まとめておくことは大切なことですね。気づいてみると、記憶力が悪くなっていて、以前はっきりと思い出すことが出来たことが、出来なくなっていたりします。きっかけが、きっかけを作り、連鎖反応で思い出すこともありますが。

yakko様
昔憧れていた女性に、会って見たいと思いつつ、思い出の中だけで留めておきたいという気持ちもあります。『ワイマールのロッテ』のようになってしまうのも、やはり淋しいことです。記憶の中にあると、永遠にその姿のままですから。

mimimomo様
本当に嫌な時代と言えば、私にとっては日本中がバブル景気で狂気につつまれていた時代です。あの時期、私は社会からの孤立感、疎外感を感じました。こんな大嫌いな時期のことも、文章にする時、詩にする時は、相当に手を変え品を変え、味付けしてしまうことでしょう。

Kanna様
絵についてのコメント有難うございます。実は、この絵は、途中で投げ出したくなるほど、茫洋たる海の真中に放り出されたような気分になりました。何故、このような構図で描きはじめてしまったのか、と。それでも、最近やっと見に付けた「諦めない」という気持ちが救ってくれました。描いているうちに、悪くないと思われてきたのです。
仰る通り、クーピーペンシルに比べて、水彩絵具は大きな面を短時間で塗ることが出来るので、全体的な印象を作り上げてゆくにはとても有効です。尤も、細部については細い筆で塗らないといけないので、時間が掛かります。
私はドガのパステル画が好きですが、水彩とクーピーペンシルの色は、ちょっとあんな色彩に似ているような気がします。
次の次には『鰯の埋葬』の絵を出します。これは自信作です。
by アヨアン・イゴカー (2011-08-12 13:43) 

yuyaさん

忘れられないワンシーンのような、追憶に溶け込みそうな、そんな感じのする絵ですね。

by yuyaさん (2011-08-12 16:33) 

Sakae

小説の挿絵のように、雰囲気がありますね。
by Sakae (2011-08-13 17:07) 

sig

ぴったりと波長の合う女性と最初に出会ったとき、この絵のようにパアッと輝いて見えるというのは本当ですね。その人と一緒になれれば幸せになれそうですね。
by sig (2011-08-21 11:40) 

アヨアン・イゴカー

yuya様
結局、この女性とお付き合いすることはありませんでしたが、大学に入ってから暫く、彼女の印象で詩を書いたり、絵を描いたりしていました。

Sakae様
>小説の挿絵
詩画集を作ろうと長年計画しているのです。何度も計画しているのです。しかし、なかなか自分の期待している世界が出来ず悩んでいたのです。そして、今年、その方向が見えてきたような気がします。

sig様
波長が合うと言うのは、「馬が合う」に近い、感性の共有のようなものかもしれません。そういうものを感じる場合が極まれにあります。そんな時には、相手が他人のような気がしません。尤も、自分の頭の中でのみでのことに過ぎないのですが。
by アヨアン・イゴカー (2011-08-21 22:50) 

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