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黒澤明監督『白痴』 [日記・雑感]

 昨日は届いたキャノンのプリンターを接続する前にDVDとYoutubeで映画を観た。一つ目は借りて来て観てすっかり気に入った木下恵介監督『お嬢さん乾杯』。何故この作品が懐かしさを催させるのか。戦後間もない銀座の風景、緑の多い武蔵野の風景、青春の甘酸っぱさ、青年たちの抱く理想、憧れ、絶望など、恐らくそれらのものがこの映画に封じ込められているからだろうと思う。この作品と『カルメン故郷へ帰る』は妻がDVDを購入したので、見たい時に見られるので、幸せな気分。
 そして、その幸せな気分のまま、Youtubeで『白痴』を観る。これは原節子が見たかったこともある。最盛期にある女優の魅力を見ておきたいと思ったのである。母から借りた原節子についての文庫本には、10代の輝くような美しさの原節子の写真が載っていたので、戦時中の作品なども見られれば面白いかもしれない。
 『白痴』はドストエフスキーの原作を基にしている。劇団時代に、苦労して読んだ小説である。私は長編が苦手である。蛇よろしく、長いからである。黒澤監督のこの作品は3時間近くあるが、あまりの引力に、吸い寄せられるように観てしまった。銃殺直前に釈放された主人公、囲われ者となっている女、ごろつき(ロゴージン/赤間)、地位と金と権力で生きている人々。主人公(亀田/ムイシュキン公爵)はイエス・キリストである。そして囲われ者(那須妙子/ナスターシャ・フィリポヴナ)はマグダラのマリア。彼女の写真を見た亀田は釘付けになってしまう。実際の妙子に出合った時、彼は彼女の清い魂を見抜き、信じる。不幸だった妙子も、亀田に強く惹かれるが、結局は自分と結ばれることが亀田の幸福にはならない、と考え、自分以外の女との平和な結婚生活をするよう求める。それは献身的な愛の行為であると同時に贖罪の行為でもある。夏目漱石の、自分の親友に恋人を譲る男達を思い出す。そして悲劇的な結末が待っている。
 1997-5-3 a gentleman, a poet, a dreamer always hopeful of romance.JPG他者に譲った幸福は、屈折した愛情は、自分自身の本当の幸福には繋がらないのだろうと思う。人のために食べることも、眠ることも、痛みを引き受けることもできないように。しかしながら、他者の幸福を願わなければ、人類の本当の幸福は訪れないだろうとも思う。
 いろいろと考えさせられる作品である。それにしても何と熱烈な恋愛物語なのだろう。一目惚れという代物、これは危険でございます。

 そして今日の絵は、記事に何の関係もないスケッチ。チャップリンと猫の貧爾君。A gentleman, a poet, a dreamer always hopeful of romance


nice!(62)  コメント(12) 

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コメント 12

yakko

こんにちは。猫の貧爾君、懐かしいですね。
by yakko (2011-02-27 16:23) 

月夜のうずのしゅげ

再開まっていました。
原節子の写真集をときどき見ています。
by 月夜のうずのしゅげ (2011-02-27 18:51) 

glennmie

私、ドフトエフスキーとチャップリンと夏目漱石が好きなんです・・・・
by glennmie (2011-02-27 19:38) 

にすけん

 まず連作の物語は楽しく拝読させていただきました。入り混じる今昔の単語がなんとも愉快な雰囲気を漂わせていて面白かったです。
 愛情の感情は古来からさまざまに語られていますが、ここ最近は現実の事件でも、架空のストーリーでも、まともな愛情の概念が消滅してしまったような気がして少々怖いです。
by にすけん (2011-02-28 15:34) 

sig

こんばんは。
YOUtubeで映画が見られる良い時代になりましたね。「白雉」は観ていませんが、日本初のカラー映画とされる「カルメン故郷に帰る」は録画したテープを持っています。高峰秀子さんのきれいなこと。亡くなったことが悔やまれますね。
by sig (2011-03-01 00:24) 

kakasisannpo

記事と関係のない 
チャプリン
も懐かしい
by kakasisannpo (2011-03-02 09:43) 

mimimomo

こんにちは^^
ご訪問遅くなりました。ちょっとお花見に行っておりました。
昔の映画のほうがずっと魅入られます。きっとわたくし自身が歳をとったからでしょうね。
チャプリンもいいですね^^
by mimimomo (2011-03-03 14:37) 

youzi

外国の絵本で出てきそうな絵がとても素敵です。
by youzi (2011-03-03 22:28) 

大善士

很久以前的电影了。黑泽明的电影我都爱看。

とても長い以前の映画の了。黒沢明の映画は私は全部見ることを愛する。
by 大善士 (2011-03-05 06:58) 

扶侶夢

猫の貧爾君…久しぶりに会えました。なんだか嬉しそうですね。
by 扶侶夢 (2011-03-05 23:46) 

アヨアン・イゴカー

krause様、kurakichi様、よっちゃん様、デザイン屋様、orange-beco様、kaoru様、yakko様、flutist様、もめてる様、gigipapa様、月のうずのしゅげ様、えれあ様、glennmie様、くらま様、ミモザ様、さとふみ様、うまお様、八犬伝様、ChinchikoPapa様、スマイル様、carotte様、モカ様Goshu様、☆箒☆様、にすけん様、いっぷく様、galapagos様、sig様、be-sun様、ゆきねこ様、水郷楽人様、ぼるふがんぐ様、今造ROWINGTEAM様、兎座様、optimist様、ねじまき鳥様、シラネアオイ様kakasisannpo様、kohtyan様、sak様、旅爺さん様、mimimomo様、shcnitzer様、youzi様、+k様、青い鳥様、りんこう様、pittorice様、扶侶夢様、zak様、ハギマシコ様、ami様 皆様 nice有難うございます。
by アヨアン・イゴカー (2011-03-06 14:10) 

アヨアン・イゴカー

yakko様
貧爾は、私達夫婦にとって、不滅です。時々写真をみては、ため息をついています。

月夜のうずのしゅげ様
原節子の写真お持ちなのですか?私は、よく知らないのですが、原節子は30前後が一番美しいのではないかと感じました。『お嬢さん乾杯』や『白痴』の彼女は、とても魅力的です。

glennmie様
ドストエフスキーは長いので苦手ですが、『罪と罰』『カラマーゾフ』『地下室生活者の手記』その他、学生時代およびその後、苦労しながら読みました。『地下室生活者の手記』などは、自分に共通するものを感じ、面白く読みました。

にすけん様
人工的すぎたり、感情が複雑すぎる時、素朴な、原始的なものに接すると、感動がもっと大きいと感じます。

sig様
妻は高峰秀子の大ファンです。『浮雲』他何本もの作品のDVDを借りてきて観ていました。
私もカルメンは大好きです。日本初の総天然色作品として百科事典に載っていたので名前は知っていましたが、テレビで以前に放送されたのを見るまでは、こんなにユーモアのある楽しい作品であることを知りませんでした。これからも何度もDVDを観ることになりそうです。

kakasisannpo様
この絵は、チャーリー・チャップリンの自伝にある写真を元にしました。

mimimomo様
妻と話しているのですが、日本映画は優秀な作品が沢山あります。台本がしっかり書かれているものは、強く引き付けられます。
チャップリンの無声映画もいいですね。galapagosさんが紹介されている”Pay Day”や”The Kid”味があります。"City Lights"なども、哀愁とユーモアが随所に見られますね。

youzi様
外国の絵本?嬉しいコメントです。有難うございます。

大善士様
黒澤明監督は若い時の作品が好きです。

扶侶夢様
この時の貧爾は、まだ元気だったので、香箱坐りをして、得意そうでした。
by アヨアン・イゴカー (2011-03-06 14:59) 

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