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井原西鶴『本朝二十不孝』 [随想]

井原西鶴『本朝二十不孝』

今日は、土曜日の振り替え休日。

さて、今日は西鶴の小説について書いて置きたい。一昨年20091224日に水道橋駅近くの古本屋で購入した井原西鶴の『本朝二十不孝』(岩波文庫)。頁の途中には東大生協のレシートが入っていた。それを見ると購入年が1976年で☆三つなので定価300円であるが、大学生協だから一割引で、270円で購入している。こういう過去の証拠にであうことがあるのが古本の面白さでもある。

巻一の(一)だけ読んで放置しておいたものを、昨年末から読み始める。帰宅時の電車の中でしか読まないので、なかなか捗らない。やっと先日読了。どれも面白い。その中の一つがオセロに出てくる副官のイアーゴーを思い出させたので書いておきたい。

 本朝二十不孝巻四之三.JPG巻四(三)木陰(こかげ)(そで)(ぐち)曇りなき身を、うたがはるる程、世に、迷惑なる事はなし、天、まことをてらし給へ共。其時節を待ず、身を失ふも悲し。心の浪風たつも、人の云なしにして、是非なき事有。・・・ 

越前の榎本万左衛門というお百姓がいた。商売も賢くやっていたが、うまく行かず裸一貫になってしまう。妻も乳飲み子、万太郎(万之助)を残して死んでしまう。育てかねて辻堂に捨てるが、雀が子供を育てているのをみて思い直す。

その後商売をしてあちこちの村を訪ねていて、ある後家に出会い、再婚する。この嫁は見苦しくない上にたいそうな働き者だった。そのため家も豊かになる。

万太郎も十六歳の見た目のよい男になる。しかし、見た目と異なり、年中親に逆らっていた。継母が之を注意すると逆恨みし、継母を落とし入れようとして、父親に継母が自分に戯れてくるので人聞きが悪く無念だ、と嘘をつく。その証拠に、父親に自分と継母と一緒にいるところを、隠れて見るように言う。万太郎は庭の柿が色づいたので取ろうと継母を誘い、首尾を見計らって、自分の首筋に背中に虫が入ったようだから早く取ってくれと言う。継母は言われるままに袖口から手をさしいれてみるが、何も居ない。

この様を見た万左衛門は、すっかり息子の言葉を信じ、理由も言わず妻を追い出してしまう。絶望した継母は出家。

しかし、悪事千里を走るで、この万太郎の悪事は知れ渡り、万太郎も身の置き所がなくなって京都の方へ行くが、その途中大きな雷が落ちて、万太郎をさらって行く。 

 

この『本朝二十不孝』は、どれも味わいがあって面白く読むことができた。巻五の(二)『八人の猩々講』と言う大酒のみの話も、三十三間堂通し矢に擬した三十三矢数酒のことが書かれていて、江戸文化の一端が窺われ興味が尽きない。

続く巻五の(三)『無用の力自慢』。これは題だけでも笑ってしまう。無類の相撲好きで親の言うことも聞かず相撲に勤しんで、自分は強いと思い込んでいるが、怪力の力士に投げ飛ばされ、半身不随になり親に面倒を掛ける親不孝者。

今、鞄の中には『日本永代蔵』が入っている。日本の古典は面白いと思う。


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コメント 9

mimimomo

おはようございます^^
現代文に書かれたアヨアン・イゴカーさんの分は読みやすく楽しいですね。
でも旧仮名遣いや古文のような文章を読むのは骨が折れます。
楽しめるアヨアン・イゴカーさんが羨ましいですよ。
by mimimomo (2011-02-04 09:22) 

yuyaさん

読んでいるうちに、なんだか無性に本を読みたくなってきました。
アヨアンさんは文章を美味しそうに書きますね。
この絵もアヨアンさんが描かれたのでしょうか。
線から垢抜けた優しさを感じます。
私の好きなタッチです。

by yuyaさん (2011-02-05 19:37) 

duke

古典に触れるのは、歌舞伎鑑賞の時くらい・・なので
歌舞伎が見たくなりました!^^

by duke (2011-02-05 22:32) 

t-toshi

初めまして。アヨアン・イゴカーさんに刺激されました。西鶴の「本朝二十不幸」を私も近々読んでみようと思っています。ありがとうございました。
by t-toshi (2011-02-06 11:56) 

アヨアン・イゴカー

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皆様 nice有難うございます。
by アヨアン・イゴカー (2011-02-06 15:45) 

アヨアン・イゴカー

mimimomo様
最近、やっと少しだけ楽に読めるようになりました。
読みたい作品がまだまだ沢山あります。

yuya様
友人のN君には、私の文章からは独特の匂いがする、と言われたことがあります。彼のその言葉で、文章をもっと書こうという気になり、以前よりも遥かに沢山(恐らく2倍から5倍くらい)の文章を書くようになりました。
この挿絵は、この記事のために描きました。基にしたのは文庫本の挿絵です。

duke様
歌舞伎は殆ど見たことがありません。それでも、歌舞伎の台本はいくつか図書館から借りて読みました。『歌舞伎十八番』や『忠臣蔵』など。威勢がよくて、歯切れがよくて、好きです。

t-toshi様
ようこそお越しくださいました。
古文書の修復などもなさるのですね。古文書は、まるで読めませぬ。
草書などは美しく大好きですが、読めません。
by アヨアン・イゴカー (2011-02-06 15:58) 

SILENT

西鶴 の時代
魅力的ですね
今年から 俳諧連歌の 江戸の歴史を学び始めます
by SILENT (2011-02-08 07:46) 

sig

古今東西、人のさがは変らないということでしょうか。
でもアヨアンさんは本当によく研鑽されておりますね。
by sig (2011-02-11 13:36) 

youzi

今回の絵はいつもの絵とは違って、日本調ですね。
井原西鶴って感じする絵です。
by youzi (2011-02-11 21:50) 

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