SSブログ

原宿クエスト・ホールへ、多摩美術大学卒業制作作品展を観に行く [日記・雑感]

 昨日、2009年2月28日土曜日は、原宿のクエスト・ホールへ行く。多摩美術大学の卒業制作作品展を見るためである。前日の金曜日に、霙の降る中を合計一時間半以上も歩き回っていたため、すっかり風邪を引いてしまって体調を壊していた私は、いそいそと外出する気分にはまったくなれなかった。自分の音楽が使われていると言うのに、他人事のような体の鈍さであった。まるで真冬のようにマフラーを首に巻き、しっかりと着込んで、手袋もはめて出掛けた。予定の電車に乗り遅れても気にもならない。
 明治神宮前駅を外に出ると、物凄い人通りだった。その大半が若者である。クエスト・ホールに到着したのは二時十分頃であった。二時には着く予定でいたのに、十分も遅刻である。中学校時代からの親友も来てくれると約束してくれていたからあまり遅れてはならないのに、この始末である。
 妻と私は受付で会場案内を受け取ると、先に進んだ。あちこちに展示作品があるので、これはORさんの『Animal Dance』のアニメーションを見つけるのは難しいかもしれない、と少し弱気になって会場に入る。と、直ぐに私の音楽が響いてきた。急いで妻と音のする方へ行く。40インチ位のディスプレイに、既にその動画の一部を見たことのあるアニメーションが踊っていた。彼は以前、完成した部分を私に紹介してくれていた。残念ながら音が小さく、思ったほど迫力がない。しかし、多くの作品が発表されるのだから仕方ないと思う。こちらのディスプレイでは五人位の作品がエンドレスで流れているようだった。他の作品も見たのだが、ORさんの作品が優れているように見えた。ORさんのこの未完成作品を見ていた女子学生らしき二人が「主張が見えない。何を言わんとしているのかが、よく分からないね。」と言っていた。
 画面も音量も小さいから残念ね、と妻が言う。展示場を他の作品も見ながら先へ進む。すると奥からもっと音量の大きい『Animal Dance』(雄鶏の蹴爪の舞)の音楽が聞えてきた。私たちは急いでそちらへ移動した。そこにはパイプ椅子が三十客位並べてあり、着席して動画を鑑賞できる場所になっていた。途中からではあったが、大きな音量と画面で見ることが出来た。流石に迫力が違う。
 『Animal Dance』が終わった段階で、前の方に坐っていた年配の男女が立ち上がった。そして男性は私たちに向かって手を上げた。マスクをしていたので直ぐに分からなかったが、私の親友が夫婦で来てくれていたのだった。彼は翌日出張で福島県のいわき市に行かねばならないのに、わざわざ時間を作ってくれたのだった。年賀状やメールのやりとりはしていたが、会うのは8年ぶり位だった。彼は原宿からそのまま出張先へ移動するので、肩掛け鞄を持ち、背広姿で来ていた。
 友人ホーカッサン夫妻と私たちは喫茶店を探して彷徨った。原宿は人が多く、喫茶店はどこも満席状態であった。やむなくクエスト・ホールのロビーに設置されている喫茶空間に戻り、あれこれ話をした。こういう機会に来てくれるのは、本当に嬉しい。風邪を引いていて熱っぽかった私は、ぼんやりしていたようだが、それでも心の中では有難いと感謝していた。
 ホーカッサン夫妻が会場を去ってから、私たちはORさんに挨拶をするべく、会場で作品を見ながら待っていた。受付に五時頃には来る筈だ、と受付にいた女性が言っていたので、五時過ぎに行く。私が彼を探していたことは伝わっていたのか、私が近付くと直ぐに彼は立ち上がった。そして、手を差し出した。握手をする。小柄で、目の綺麗な、知的な印象を与える顔の若者だった。妻は道中「アニメーションとか動画とかだから、アキバ系だったりしてね。」と言ってふざけていたのだが、実際に会ってみると、爽やかな好青年であった。私がお世辞抜きで「いろいろ見た中で、ORさんのは好かったですよ。」と言い、妻は「一番好かったです。」と言うと彼は「曲が好かったので。」と言ってくれた。「途中になっていますのが、最後どのようになるかが楽しみですね!」と私。「完成したらDVDお送りします。」と彼。私たちは、ORさんから清清しい印象を受けたまま、帰途についた。
 彼の作品は、ORさんの名前、音楽Ayoan Igokah、DTMのNyoshiniiにょしにいさんの名前が表示された後、音楽と共に始まる。画面はギリシアの壺絵のようで、赤橙と黒だけで構成されている。画面には意図的に八ミリフィルムなどで見られる傷のようなものが付けられていて、フィルムを使って作成しているような効果を出している。黒で描かれた動物、線、人間、山羊、魚、狼、林などが、次々に形を変えてゆく。そして、彼の作品は画面を自由自在に、あるいは最大限に、無から全画面まで使っているので、アニメーションの中に、鼓動のようなものを感じることができた。
 一部でも紹介できればいいのだが、許可を得ていないし、映像もないので、彼が関わっている作品のURLを紹介してその代わりとしたい。

http://www.ktv.co.jp/baca/archive/2008/mv/08_04.wvx

10377453.jpg

 組曲『鶏』より、『雄鶏の蹴爪の舞』にヤマハのMySoundの登録時に使った絵。別段、この曲を思い出しながら描いた絵ではないが、雄鶏がいるので使った次第。


nice!(44)  コメント(16) 

nice! 44

コメント 16

doudesyo

おはようございます。
やはり行く事ができませんでした。んー、見たかった。40inchですと会場としてはそれほどのおおきさではなかったかもしれませんね。でも素晴らしい絵と音楽のようですので、とても良かったのではないでしょうか。ギリシャの壺絵みたいな色合いですね、想像しやすいです。福島のいわき市ですか?ご案内しましょうか?とはいったもののお友達でしたか残念です。お体に大切にしてください。
by doudesyo (2009-03-02 07:47) 

sig

こんばんは。
アヨアン・イゴカーさん作曲によるアニメーション、盛況だったようでよかったですね。
奥様にも認めていただけて、なによりの励みになりますね。
人形劇もアニメーションも、本来動かないものに命を与える、まさにクリエイティブな楽しい作業ですね。

今、ご紹介のORさんのベートーベンのアニメを見ました。すばらしいですね!!
アニメの原点である白地に線画、あるいは黒字にカリグラフィの色彩効果。それにキャラクターの動きやメタモルフォーゼがとても見事でした。
by sig (2009-03-02 22:36) 

mimimomo

おはようございます^^
素晴らしいですね~ご自分のお仕事を通じて、色んな方と知りあったり
友と旧交を深めたり・・・まさに輝ける人生ですね。

by mimimomo (2009-03-03 05:33) 

いっぷく

体調を崩されていたのが残念でしたが、
自分のかかわった作品をいつもと違う環境で聴くというのは
興味深い体験でしょうね。

ORさんの作品を拝見しましたが線の持つ造形の特徴を
うまく生かされていて音楽とうまく融合した作品に仕上がっていますね、
曲線のもつ柔らかさがユーモアも感じさせてくれ、流れるような展開に見入ってしまいました、素晴らしいですね。



by いっぷく (2009-03-03 06:52) 

ぼくくま

>翌日出張で福島県のいわき市に行かねばならないのに
こういう気持ち嬉しいですよね。
アヨアン・イゴカーさんの人間関係はとても暖かい気持ちで
結ばれているんだなと言う印象を受けました。

自分も今年は二度ほど冷えから体の調子を
崩しています。
しかも、今日は雪が降るとか…寒い日続きそうなので
暖かくしてお体大事にされて下さい。

by ぼくくま (2009-03-03 07:53) 

すうちい

リンク先の作品を見てきました。
なかなかおもしろいですね。途中ちょっと余計なシーンもあったけど。
こういう作品にご自分で作曲した音楽が使われて、それを会場で見ながら旧友と再会なんて、素敵な一日ですね。^^
by すうちい (2009-03-03 11:29) 

yoku

体調の優れない中、大変でしたね。
会場の若者の息吹が感じられて、いい感じです。
そうした中で、ご自分の作品を公表されるというのは大変なことです。
オーケストラの作品もいいですね。
楽しく拝見しました。
by yoku (2009-03-03 16:44) 

にすけん

 アニメーション、特に人物など具体的な大きさのイメージを伴うオブジェクトが画面にないものの場合、プレゼンテーション時の画面の大きさは直接作品の印象を左右しますね。
 そこまで自由のきく展示環境もあまりないでしょうし、とても難しいと思います。
by にすけん (2009-03-03 18:48) 

くーぷらん

盛況だったようで何よりです。このような素敵な出会いのお話を拝見すると、心が温かくなります。
お体、どうかお大事に。
by くーぷらん (2009-03-03 23:11) 

旅爺さん

美術大学の卒業作品展となると相当に優秀な作品がありそうですね。
by 旅爺さん (2009-03-05 10:10) 

kakasisannpo

楽しい映像でしたよ。
人と人の出会い
いつか忘れ去られたり、いつか思い出したり
いい出会いは一生の宝ですね
by kakasisannpo (2009-03-05 10:12) 

mimimomo

再び~
こんにちは^^
何時もご訪問頂きありがとうございます~♪
by mimimomo (2009-03-07 12:52) 

アヨアン・イゴカー

kakasisannpo様、めぎ様、えれあ様、mitu様、Krause様、doudesyo様、旅爺さん様、shin様、takemovies様、漢様、くらま様、御茶屋様、アリスとテレス様、夢空様、toraneko-tora様、sig様、lapis様、花火師様、orange-beco様、mimimomo様、いっぷく様、ぼくくま様、すうちい様、サチ様、yoku様、さとふみ様、にすけん様、ミモザ様、くーぷらん様、デザイン屋様、Chinchiko-Papa様、めりっさ様、Zenjimaru様、お散歩様、スー様 nice有難うございます。

doudesyo様
色の第一印象が、赤絵、黒絵でした。但し、形はめまぐるしく変化するので、ギリシア風ではありません。ORさん独特の線と面です。彼から送られてきたDM葉書を入れた封書の宛名も、いかにも美大の学生さんらしく味のある字、文字の配置です。妻と二人で、流石だね、と言っておりました。

sig様
ご紹介させて頂いた『オーケストラ』で、どれだけORさんが関わったかは分かりませんが、中心的な存在であるような印象をもちました。オーケストラの楽団員たちの特徴が簡単な線でよく再現されていると思いました。演奏されている楽器には必ずしも忠実なアニメーションではありませんが、音楽の起伏など、よく描き分けられていると思いました。

mimimomo様
残念ながら、ちっとも輝いてはいません。正直、いつも何とかしなければと思っているのです。それはさておき、友達は大切にしたいと思っています。いつか私は友人ホーカッサンのことをどこかでもっと詳しく紹介することになると思います。

いっぷく様
自分でもピアノを演奏して・・と思うのですが、結構難しい曲なものですから。誰かが自分の作品を演奏してくれたら嬉しい、とは思います。

ORさん達の作品、特にコントラバスの場面気に入りました。あの大きな楽器の演奏が、クレッシェンドと共に再現されて、愉快です。

ぼくくま様
有難うございます。油断大敵であります。風邪などあまり引かないだろうと高をくくっていたのであります。
私は友人が少ない分だけ、長い付き合いをしているのかもしれません。

すうちい様
こんな経験は、勿論初めてでしたので、なんとも不思議な気持ちになるはずでした。熱があったので、あまりよく覚えていません。それでも、ドビュッシーの『月の光』を背景にしているアニメーションと同じ並びで、自作が流れていたかと思うと、嬉しいです。
旧友のことは、いつかどこかでご紹介する予定です。

yoku様
原宿は、平日よりも土日が混んでいるようです。若者の街です。仲間を求めて集まるのは、生物として見た場合、普通のことです。
チャップリンの『独裁者』の一場面にも同様の趣向がありますが、こういう音楽に合わせて人間や物が動くというのは、何故か見入ってしまいます。

にすけん様
スクリーン会場の方は、1.5×3メートル以上の画面だったと思います。映画のような迫力を期待するのであれば、大画面のほうが間違いなくよかったとは思います。

くーぷらん様
夫妻で来てくれるとは思っていませんでした。予期しない喜びは格別ですね。
ORさんも、感じのよい青年でした。活躍を期待しています。

旅爺さん様
絵本やオブジェなど、いろいろ展示されているものを見ました。
相当に優秀な作品ではあります。それなりの水準の作品ではありました。
但し、個性と言う点からは、まだ学生さんですから・・・自分の個性をみつけ作品にする、これは難しいことです。芸術家みんなが通る、避けて通れない道です。

kakasisannpo様
ORさんたちの作品、お気に召してよかったです。
>いい出会いは一生の宝<
本当にそう思います。その出会いがなければ、現在の自分がいない、とすら言うことができます。

mimimomo様
二度も書き込み有難うございます。
雄大な富士山の写真、湖の透明な水、自然、好いですね。
それにしても、mimimomoさんは、沢山の花の名前を知ってらっしゃるのですね!



by アヨアン・イゴカー (2009-03-07 13:52) 

SAKANAKANE

カゼは大変でしたが、出掛けるコトができて良かったですね。
好青年のORさん、将来的に成功されると良いですね。
by SAKANAKANE (2009-03-10 00:13) 

SILENT

こんにちは
はじめましてアニメーシヨン拝見しました。
線と音とリズムが高揚して素敵な作品ですね。
昔チェコかどこか東欧のアニメーションでマッチ棒がダンスを踊り最後に銀紙のドレスに火がついて燃える作品が今でも印象に残っていてその時の興奮状態を思い出しました。ブログも覗いてくださりありがとうございました.SILENT
by SILENT (2009-03-13 08:46) 

アヨアン・イゴカー

SAKANAKANE様
風邪は甘く見てはいけないと思い知りました。折角の鑑賞が台無しになってしまいましたから。
そうですね。ORさんの活躍は期待しています。

SILENT様
コメント有難うございます。
確かに、チェコのアニメーションは面白いですね、よく知っている訳ではありませんが。チェコは人形劇も優れていますね。
SILENTさんのブログには、不思議な気分にさせられる写真があるので、興味深いです。
by アヨアン・イゴカー (2009-03-14 00:16) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。