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人形芝居『ヘンゼルとグレーテル』 その3

2007/11/6
「ただ只管書くのみ」  随筆
グリム童話『ヘンゼルとグレーテル』は、私が小学校の時に東横劇場か三越劇場に母に連れてきてもらって見た、多分初めての木馬座の芝居でした。小学校二年生の時に、木馬座による『みにくいアヒルの子』を影絵で見ました。あの時の感動は忘れられません。当時は声優が音響室にいて、演技に合せて台詞を読んだものです。その後はアフレコとかアテレコとか言う表現で表されるテープ録音に役者が合せる方式に変更になりましたが。
 『みにくいアヒルの子』ではスクリーンに影絵が写し出されました。影絵の後ろから、つまり舞台奥のホリゾントから照明が客席側のスクリーンに当てられたのでした。白いスクリーンは種々雑多な色のゼラチンによって染められ、それが息をのむほど美しく感じられました。余りに感動した私は、家に帰ってから、紙を黒く塗って、アヒルの子の影絵を切り抜きました。これはとてもよく出来て、自分でも気に入っていましたが、世田谷区立明正小学校の同級生のお見舞いに上げることにしました。盲腸炎で入院した男の子がいたのです。優しい遠山先生が、お見舞いにみんなで何かを作ったりしたものを先生が届けて上げるので、持ってきなさい仰ったのでした。
 それから1年後か2年後に見たのが『ヘンゼルとグレーテル』でした。森の中で迷ったヘンゼルとグレーテルが魔女に追いかけられて、舞台から客席へ降り、走り回る、と言う演出でした。私たちは、着ぐるみを着たヘンゼルやグレーテル、魔女が近くを走り抜けてゆくのを興奮して見守りました。

 あんよで、とんとんとん、 
 おててをぱちぱちぱち
 いちにさーん、いちにさーん
 ダンスはたのしい

と言う歌詞を今でも覚えています。旋律はフンパーディンクの歌劇『ヘンゼルとグレーテル』をそのまま使っていました。
 この劇団木馬座の児童劇は、私の基本を形成してしまったのかもしれません。もともとこういうものが好きになる素養があったのでしょうが。
 その後は、ケストナーの『五月三十五日』を着ぐるみの芝居で観ました。立派な、特別に作られた未来自動車のようなものも登場し、まるで夢の世界を見ているようでした。赤道を掃除する男に出会う場面も、舞台の上手から下手に向かって並べられた赤い道の上に、デッキブラシを持った男がいて、磨いているのが強烈に印象に残っています。今考えれば、平台に脚をつけて並べ、赤いベニヤ板を張った大道具だったのでしょうが。ホリゾント幕の空色と、赤道の真っ赤ないろ、そして黄色い太陽光の照明が、とても南国の雰囲気をよく表していて、自分達も赤道まで旅しているような気分を味わうことができました。あぁ、これが芝居の魅力なのです。夢を与えることこそが。


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