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伯父吉江新二 その1 [吉江新二の思い出]

 自分が無意識の内にも最も意識していた、影響を受けていた伯父が先週8月9日火曜日に96歳で他界した。高齢なので全く予期していなかったと言えば嘘になるが、予期したくなかった、伯父が他界するなどと言うことは考えたくもなかった。90を過ぎてからも元気に歩き回っていると聞いていたので。が、現実にはそれは不可避であり、受け入れざるをえないことであった。
My beloved Uncle Shinji 20160816DSCN3107.JPG この絵描きの新二伯父は、今年2016年の5月27日頃、腰が立たなくなり緊急入院した。一週間ほど経った6月6日の土曜日に私の両親と兄、姉、叔母、弟と私はお見舞いに行った。東京都東久留米市の滝山病院である。兄と私は電車とバスで行ったのだったが、電車の遅延もあり予定よりも30分ほど遅く着いたため、別行動をしていた両親や姉たちは見舞いを終え、食事のために料理屋へ移動してゆくところだった。急いで伯父の病室を訪れ、話し掛けた。最初ぼんやりしているようだったが、すぐに私のことを分かってくれたようで、大きく相好を崩す。が、声を発しても言葉にならず聞き取れない。それでも、私は6年前に伯父が話してくれた都立新宿高校の教え子たち、著名な音楽家二人の話をすると、本当に嬉しそうににこにこしていた。そして、話し掛けている私を、無言のまま大きな目をしっかりと見開いて、じっと見つめた。そんな伯父と私を見ていた兄が、スマートフォンで写真を撮ってくれた。もっと一緒にいたかったのだが、両親たちを待たせているので、やむを得ず、面会は短時間で切り上げることになった。
 その写真を元に、木炭と鉛筆で伯父の絵を描いてみた。こんなデッサンをするのは本当に久しぶりだ。こんな機会がなければ描いていなかったかもしれない。今回は、これを機に、伯父の肖像画を数種類描いてみたいと思っている。
 伯父は主体美術協会の創立メンバーの一人であったことがウェブを調べていて分かった。主体美術の協会の中心メンバーだとは母から聞いてはいたのだったが。私は、少しでも地位がある人間には、生来条件反射のように抵抗感を抱いてしまう傾向があるのかもしれない。今はそうでもないと思うが。毎年、主体美術展の案内ハガキが母に送られてきていたことも知っていたが、行った事は一度もない。毎年展覧会が開催されてそこに出品していると言うのは、何とも偉そうに感じた。実際を知らないからゆえの愚かな思い込みだったのだが、嗚呼、何と言う甥っ子か!?
 伯父に対しても、無意識の内にも意識しているためにだろうか、不思議な甘えのような抵抗を示してしまうのである。あえて歯向かってみる。伯父のその生き方、それは私が自分の頭で作り上げている妄想にすぎないかもしれないが、またそれを検証しようとも考えていないが、その生き方が影響を及ぼしている、伯父から強い影響を受けていると感じる。
 残念ながら、この伯父との接点は多くはないが、それでも兄弟の中では多い方かもしれないので、覚えている限りの思い出を書いておこうと思っている。そして、都立新宿高校絵画部O.B.会の皆さんが出版して下さった『吉江新二作品集』に載っている絵も、いくつか紹介し、自分なりの感想を述べたいと思う。それは大好きだった伯父が存在したことへの感謝かもしれない。伯父には、そんなものはいらねえ、と言われそうだが。


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majyo

ページを開いて驚いています。叔父様が亡くなられた東久留米の滝山を
今日は通過しました。
撮った写真からのデッサンですが
叔父様を含め、アヨアンさん、皆様、芸術家なんですね
新宿高校で教鞭取られていたのですね
またご紹介ください

by majyo (2016-08-17 17:15) 

Enrique

伯父様のご他界お悔やみ申し上げます。
私の周りでも高齢の人は,夏に旅立たれる事が多いように思います。
家内の父親も先月末亡くなりました。この人は教員退職後に素人油絵を描いていました。

by Enrique (2016-08-17 18:32) 

アヨアン・イゴカー

DorakenBegginer様、夢の狩人様、Mitch様、schnitzer様、般若坊様、めもてる様、ChinchikoPapa様、kurakichi様、くらま様、kiyokiyo様、いっぷく様、旅爺さん様、ビタースイート様、コミックン様、mentaiko様、扶侶夢様、宝生富貴様、モグラたたき様、shingeki様、dougakunen様、nandenkanden様、managahara様、剛力ラブ様、banpeiyu様、majyo様、Enrique様、森田恵子様、八犬伝様、doudesyo様、sig様、caveruna様、carotte様、lamer様、kohtyan様、mimimomo様、Hiro様、momotaro様、kazg様、かずのこ様、MIKUKO.様、ネオ・アッキー様、クリンクリン様 皆様nice有難うございます。
by アヨアン・イゴカー (2016-08-21 22:52) 

アヨアン・イゴカー

majyo様
伯父は、戦後直ぐに新宿高校での勤務を始めたのですが、たまにある他の都立高校への異動を断った為、校長先生より同一の学校での勤務年数が長くなって、少し威張っていたようです^^;

Enrique様
お言葉有難うございます。
定年後絵を始める、と言うのはペン画のモロさんの教室に来られている方々の多くがそういう方々です。技術的には、絵ばかり描いている人も多いようで、数年やっているとめきめきと上手くなり、相当の腕前になります。先日国立のギャラリーで展示会で生徒さんの作品を見た時、その技術に驚きました、そういう人は一人か二人なので、人数は多くないですが。
ただ、技術はあるのですが、それ以外は別問題で、芸術とは何かと言う根本の問いになってきます。

by アヨアン・イゴカー (2016-08-21 23:03) 

Kanna

伯父様のご冥福をお祈りいたします、そしてアヨアンさんも本当にお疲れさまでした。
肖像画を拝見し、アヨアンさんの伯父様への愛情、そして複雑なお気持ちを察する事が出来ました。
どんな形であっても愛する人の心に心に強く残る事、亡くなられた方にとってはそれが一番嬉しい事ではないかなと感じます。
伯父様を思いながら、ぜひたくさんの肖像画や作品を残してあげてくださいね^^
by Kanna (2016-08-26 12:59) 

アヨアン・イゴカー

Kanna様
コメント有難うございます。
不思議な感覚があったのですが、伯父の亡骸を見ながらも、私はそれが
そうなのだとは全く感じられなかったのです。いやいや、伯父は生きている、元気だ、そうしか思われなかったのです。今でもそうです。
デッサンを何枚かして、その後肖像画を何枚か描こうと思っています。出来上がったら、こちらに公開したいと思っています。
by アヨアン・イゴカー (2016-08-27 16:53) 

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