童話『提琴弾きアヨアン』その4 [詩・散文詩]
第三夜 キツツキがやって来たこと
今夜もウグイスがやってくるかと練習しながら待っていると、窓を猛烈な速さで叩く者がありました。窓を見ると、そこには赤ゲラが窓の外枠に留まっています。私は直ぐに招じ入れました。
「どうぞ、どうぞ。入った入った。
で、どうしたんだい。」
「アヨアンさん。ウグイス君と音程練習をしたそうですね。」
「そうだよ。お蔭で、随分音程が正確になったような気がするよ。」
「僕ともトレモロの練習をしてください。」
「トレモロか。緊迫感や感情を盛り上げるのにいい表現方法だね。」と私は言って、提琴を顎で支えると、弓を軽く持って手首を使って素早く弾いてみせました。
「こんなもんでどうかな。」と得意そうに。
キツツキはどうも不満そうで、「僕にもやらせてみてください。」と言って、枯れ木の帽子掛けの丸太の所へ行っていきなりつつき始めました。その音符の長さの正確さ。まるで全く同じ長さできれいに揃っていました。
「上手いもんだね。」
「そうでもないんです。一気に百六十回つつくんですが、たまにずれたり、奇数になったりしてしまうんです。正しい数つつかないと、幼虫も出て来ないんですよ。つつくことによって穴を開け、眠っている虫を振動させるんです。やっこさん、体液の循環がよくなりすっかり気持ちよくなって伸びをするんです。開けた穴からあたまをひょこっと出すんです。そこを頂いちゃうわけです。ところが正しい数をつつかないと、やっこさん警戒して出てこないんです。怪しいやつがつついていると勘付いちゃううんでしょうね。これでは、僕らの商売は上がったりなんです。」
「タタタタを一回とすると、それを四十回連続してやるということだね。」
「四十回連続、無意識のうちに四十回になっていることが求められるんです。それが結構難しいんです。一緒にお願いします。」
ということで、私もこの四十回連続のトレモロの練習を始めました。始めてみるとキツツキに合わせるのがとても難しいのです。いつの間にか夢中になって、何度も何度も練習していました。
肩が凝ったので、腕をぐるぐる回しながら外を見ると、明け方になっていました。そして、キツツキもいなくなっていました。
キツツキと一緒にトレモロ練習すれば,相当上達しそうです。
会話も実感のこもったもので,彼らも一発づつコントロールしている訳ではなく,タタタタとかの塊でやっているのだろうと想像しました。
by Enrique (2014-08-15 11:38)
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皆様nice有難うございます。
by アヨアン・イゴカー (2014-08-18 23:33)
Enrique様
リコッシュ・サルタートRicochet Saltatoと言う一打ちの弓による連続跳弓奏法などは、この啄木鳥の啄木に似ているような気がします。バイオリンには色々な奏法があって、本当に奥が深いと思います。勿論、ギターの奏法も同様だと思いますが。両親の家の宗派は曹洞宗なのですが、禅宗は好きではありません。それでも禅宗の考え方にはいろいろ勉強になるところがあります。只管打坐のようにひたすら、無念無想で練習すると、きっと新たな世界(=境地)が見えてくるのだろうと考えています。邪念ばかりはいってしまいながら練習しているため、そう思うのです。
by アヨアン・イゴカー (2014-08-18 23:45)