今様伊曾保物語 その2 王を求めたカエルたち [今様伊曾保物語]
本ブログにお越しくださっている皆様。
新年明けましておめでとうございます。
本年も宜しくお願いします。
今日からは、昨年年初に大体の構成を考え書き始め、中断していた今様伊曾保物語4作を、順次発表します。途中ですっかり忘れてしまったのは、トロイの木馬がその原因になったのは間違いないところであります。そして、再開したのが昨年末。半ば気乗りがしない状態ではありましたが、そんなこと言っている場合ではありませぬ。作品は常に完成して初めて評価されるものだから、本来は完成しなければ作品とは呼べないからであります。
今様伊曾保物語 その二 王を求めたカエルたち 2013年1月4日(金)
それはもう大分昔のことですが、小さな池にカエルたちが暮らしていました。仲良く暮らすというよりは、好き勝手に鳴きたい時鳴いたり、お腹が空いた時蝿やら蝶々などを捕食して、泳ぎたい時に泳いだりしていました。カエルたちは、根が陽気ですから放っておくと、いくらでも鳴いたり、飛んだり跳ねたり泳いだりします。
この池の秩序もカエルたちの数が少ない時は大きな問題にはならなかったのですが、池にカエルが溢れるほど沢山になると、流石にカエルたちももう少しは秩序が必要だろうと考えるようになりました。
或る日、仲間の中で一番立派な後ろ脚を持っているカエルが、ジュピター神に皆を代表して嘆願をしました。「偉大なるジュピター様。私どもカエルにも、神々の父であるようなあなた様のような王様を持つことはできないでしょうか?」
それを聴いてジュピター神はにやりとして言いました。「私では満足できぬのだね。ではお前達に相応しい王を送ってやろう。」そして池の中に一本の丸太ん棒を放り込みました。丸太ん棒は水しぶきを上げて、大きな波を起こして池の真中に落ちて、暫く波が収まるまでプカプカしていました。カエルの衆はその大きな丸太にすっかり怖気づいて岸に跳び上がって様子を見ています。震えながら「やはり、ジュピター様の送って下さる王様は偉大だ。」とか「あの巨大な水しぶきを上げるとは、その破壊力は絶大であり、絶対的だ。」などと囁き合っています。
暫くすると、件の丸太ん棒もまるで死んだように動かなくなりました。
それを見たカエルがいいます。「あのじっとしていることの威厳。威厳の中に気品があって、流石我等が王様だ。」とか「無言の圧力、それは我々の王様のことを言うんだね。」など言って、盛んに感心しております。そして、丸太ん棒に偉大な権力と力があるものと信じて、カエル達で考えた決まりを、丸太の王様にお伺いを立ててから決めると、それに従って生活を始めました。自分達で決めた規則に従っていただけなのですが。そのためこのごみごみした池に秩序が生まれました。
或る日、丸太の上を飛んでいた鴉がたまたま糞をその上に落としました。糞は丸太ん棒の上でぴちゃっと音を立てて潰れ、それが八方に飛び散ります。カエルの一匹が言います。「我等の王様の身体に不浄の糞を落とすとは、失礼な鴉である。」その声に合わせて多くのカエルたちが、鴉に対して非難の声を上げます。
でも、鴉はまるでカエルたちを小馬鹿にするように、かぁかぁ啼いて、飛び去ってしまいます。カエルの中の長老が言いました。「自分の身体に糞を落とされて、反撃できないと言うのは、王として相応しいかどうか、どうも怪しいもんじゃね。」
その言葉を聞いて、すっかりそう思った若いカエルたちはすっかり丸太ん棒を馬鹿にし始めました。「何だ、空から降って来た時、余り大きい波を作るものだから、素晴らしい立派な王様だと思い込んでしまったけれど、本当は何の役にも立たない木偶の坊(棒)じゃないか!」と言い始めました。
あっという間にこの丸太はただの役にも立たない棒にすぎない、そればかりか池の中で浮いている邪魔なものだ、と全てのカエルたちが思い始めてしまいました。そうなると、カエルたちは実に失敬なことに、丸太の王様の上にのったり、飛び込み台にしたり、もうすっかり馬鹿にし始めました。そして、もっとまともな王様が欲しいと考えるようになりました。
例のカエルがジュピター神に願い出ました。「私達に相応しい王様を下さい。もっと、動き回る、力強い王様らしい王様の方がいいのです。」ジュピター神は眉毛を上げて「前の王はお気に召さなかったのかね?」と言う顔をして池に新しい王様を放り込んでくれました。
しかし、王様として来たのはコウノトリでした。コウノトリは大のカエル好きですから、片っ端からカエルを嘴で捕まえて食べ始めました。カエルたちは大混乱です。丸太の下へ隠れたり、岸の草叢に隠れたり、飛んだり跳ねたり。
命からがら難を逃れた例のカエルたちが、ジュピター神の所へやってきました。「ジュピター様。何とかあの乱暴で残虐な王様を別の所へお戻し下さい。」
笑いながらジュピターは言いました。「今度の王様はお気に召さなかったのかね。」
カエルたちは訴えます。「あの王様は、私達を食べるのです。とても恐ろしくて住んでいることができません。私達には平和が必要なのです。」ジュピターは言いました。「分かっておる。しかし、お前達は、何もしない平和極まりない丸太棒よりも、動き回る、もっと力強い王様が欲しいと言ったではないか。」「確かに、王様らしい王様なのですが、私達に対する優しさがありません。これではみな食べられて、全滅してしまいます。」「そうだね。それでは、新しい王にはどこかへ行って貰うとしよう」
こうしてコウノトリはどこかへ姿を消し、池には再び平和が戻ってきました。食べられてしまうことに比べれば、多少窮屈でも仲良く生きていることは随分幸福なことが分かったのです。カエルたちもお互いが少し我慢すれば、何とか生きてゆけることが分かったので、場所を奪いあったりしなくなりました。命の危険に曝されて初めて平和の有難さが分かったのでした。
背伸びして自分達の会社を立派に見せようとしても、社員たちは少しも幸せにはなれないのです。背伸びしても疲れるだけです。得するのはコウノトリだけですからね。
2013/12/30
カエル達の寓話、味わいふかいですね。
鳥獣戯画の世界も大好きです。
by SILENT (2014-01-02 14:28)
あけましておめでとうございます。
本年もよろしくお願いします。m(_ _)m
作品制作は発表して初めて人の目にさらされて評価されますよね。ですから発表しない事には始まらないという側面が強いですが、多様な価値観から見れば、もっと作者と鑑賞者との融合があっても良いようにも思います。
私も作品を作らないといけないのですがなかなか出来ていません。
アヨアン・イゴカーさんを見習っていきたいと思います。
by doudesyo (2014-01-02 14:58)
身の丈を知るというのは大事ですね。
肝に銘じて一年をすごしたいと思います。
明けましておめでとうございます。
今年もどうぞよろしくお願いします。
by carotte (2014-01-02 15:39)
明けましておめでとうございます。
今年も宜しくお願い致します。
by アリスとテレス (2014-01-02 19:00)
明けましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いいたします(^u^)
by youzi (2014-01-02 23:16)
新年明けましておめでとうございます。
今年も宜しくお願い申し上げます。
by 般若坊 (2014-01-02 23:36)
あけましておめでとうございます。
一日にお参りに行きましたが、近所には神社が
三つも四つもあり、どこにいこうかといつも迷います。
本年もよろしくお願いいたします。
by yoku (2014-01-03 14:26)
明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。
含蓄の深いお話です。身の危険にさらされないと平和の有り難さが分からないカエル。残念ながら我々人間の様です。
by Enrique (2014-01-03 21:19)
明けましておめでとうございます。
本年も素敵な記事、楽しみにしています。よろしくお願いします。 ^^
by moz (2014-01-04 12:06)
SILENT様、doudesyo様、gigipapa様、tochi様、ビタースイート様、siroyagi2様、森田恵子様、夢の狩人様、アリスとテレス様、kurakichi様、yamagara22様、ChinchikoPapa様、野うさぎ様、youzi様、般若坊様、makimaki様、げいなう様、bee-15様、いっぷく様、ぜふ様、kinkin様、glennmie様、ken様、めもてる様、teftef様、yoku様、gameyattemita様、Enrique様、Halumi様、caveruna様、moz様、carotte様
皆様 本年も宜しくお願いします。nice有難うございました。
by アヨアン・イゴカー (2014-01-04 18:59)
SILENT様
今様なので、少しだけ捻ってみました。
鳥獣戯画、あの世界は一つの憧れです。
doudesyo様
明けましておめでとうございます。今年も宜しくお願いします。
今日、たまたまだったのですが、姉の孫達がツリーハウスの内側に絵を描くので監督をして欲しいと言われ一緒になってクレヨンで色塗りをしたりしました。子供達の線は、大体めちゃくちゃですが、たまに美しい色を塗ったり、面白い線を引いたりします。今日の午後は楽しい時間を送ることが出来ました。
carotte様
明けましておめでとうございます。本年も宜しくお願いします。
いつも、紹介されるビデオには日本語の解説がついているので、勉強になります。たまに、聞き取れる単語が出てくるようになりました。
アリスとテレス様
明けましておめでとうございます。本年も宜しくお願いします。
普段目にしない植物がどんどん紹介されているので、頭の中が洪水です。
youzi様
明けましておめでとうございます。本年も宜しくお願いします。
般若坊様
明けましておめでとうございます。本年も宜しくお願いします。
yoku様
明けましておめでとうございます。
神社にも行かれるのですね。
フランスなどの古い教会や街並み、想像力を掻き立てられます。
本年も宜しくお願いします。
Enrique様
明けましておめでとうございます。本年も宜しくお願いします。
ここに出てくる丸太棒は、平和憲法と読み替えてもよいかもしれない、とふと考えたりしておりました。
この連作、あと3作続きます。
moz様
明けましておめでとうございます。本年も宜しくお願いします。
今様伊曾保物語の後は、少し雰囲気の異なるものになるかもしれません。
by アヨアン・イゴカー (2014-01-04 19:19)
遅くなりましたが明けましておめでとうございます。
本年もどうぞよろしくお願いいたします。
by sig (2014-01-04 19:24)
sig様、はせお様、Nobuzo様
nice有難うございます。
sig様
明けましておめでとうございます。
本年も宜しくお願いします。
『チチを撮りに』中野量太監督が、ブルーリボン賞の新人賞にノミネートされているそうです。家内もチョイ役で出演はしているのですが、この作品と監督昨年からずっと話題になっていて、それなりに嬉しく思います。
by アヨアン・イゴカー (2014-01-05 23:18)
明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。
by mimimomo (2014-01-07 10:51)