ユーカラ風に [詩・散文詩]
『ユーカラ風に』
ヒピヤニチュパシ トトンコトトンコ
われ重き心で旅に出でんと欲す
梅雨の合間のある晴れた日に
地中を走り回るモグラに乗りて行く
トトンコトトンコ
老いたる女梟たちの一団に巡り会へり
その一人のオウナ言ひて曰く
「この鞄、内の旦那に買ってもらったの
何か悪いことをすると、あの人変な物買って来るの。
それが、先日箪笥の中から出てきたの。
黴てたから、黴を落としてきたの。」
ヒピヤニチュパシ トトンコトトンコ
かのオウナ梟、他のオウナ梟達に言ひて曰く
「東京はさぞかし、凄いでしょうね。
着いたら、まず美味しいもの食べなきゃ。
スイーツ!スイーツ!」
厚司を着た若い女雀が舞いながら歌う
「旨きもの、スイーツ!満腹であっても
何故か食べることのできるスイーツ!
老いも若きも抗するあたわぬスイーツ!
宝石のごときスイーツ!嗚呼!」
これを聞きて、オウナたち、
少女の如く甘き目をして若い雀に和す。
そこへ黒い烏青年がやって来て
糞をばら撒きながらおどけて歌う
「これもスイーツ!虫たちにとってのスイーツ!
旨きこと限りなし。
満腹の時も空腹の時も
あれば憂いこそなけれ
スカラベ、糞転がしの宝物
宝石ゆえに。」
これを聞きて、オウナたち、苦き目をして
烏青年を追い回す
やがて青年は捕まり
羽をもぎ取られ
殺され
屍は畑の案山子の隣に吊るされたり
ヒピヤニチュパシ トトンコトトンコ
と年取った雀が歌った
2013-06-30 20:47
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コメント(7)
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オウナ達のスイーツ狂いは批判者を許さない強烈さです。
鳥青年の踊りも多少強烈でもトリ社会でなら許される範囲の表現ともトレるのですが。。。
by Enrique (2013-07-01 06:13)
おはようございます^^
烏は嫌いですが、何だか可哀相~~~
by mimimomo (2013-07-01 07:07)
若い女雀と烏青年との対比が凄いですね。
烏青年の歌もごもっともな所があるのでしょうが、場が悪かったのかもしれませんね、哀れ…(笑)
雀の絵、とても可愛らしいです^^
by Kanna (2013-07-01 20:46)
おはようございます^_^スズメ、民族衣装のような服がステキ!
by youzi (2013-07-03 08:23)
昔話の挿し絵のような印象を受けました。可愛らしいです。
コメントありがとうございました。
by yuyaさん (2013-07-03 13:29)
ChinchikoPapa様、kurakichi様、sig様、そらへい様、glennmie様、404様、いっぷく様、シラネアオイ様、Mineosaurus様、Enrique様、りんこう様、mimimomo様、carotte様、flutist様、青い鳥様、海を渡る様、山子路爺様、ねじまき鳥様、めもてる様、caveruna様、kinkin様、アリスとテレス様、doudesyo様、野うさぎ様、gigipapa様、めぎ様、砂漠のラクダ様、JR浜松様、youzi様、ken様、yam様、くらま様、sakamono様、えれあ様、扶侶夢様 皆様nice有難うございます。
by アヨアン・イゴカー (2013-07-07 21:25)
Enrique様
女性の甘いもの好きは、相当のものですね。内の家内も、あぁお腹一杯と言いつつ、食後にアイスクリームを食べたりしています。
この歌は、『ユーカラ』を下敷きにしていますので、結構残酷なのです。
mimimomo様
私も烏、あんまり好きではありません。ここではカラスが嫌いでこのような描写をしたのではなく、ユーカラの歌い方そのままにしたのです。
Kanna様
有難うございます。本当は、雀の神も人間の形をしているのですが、敢て雀の顔にしました。
youzi様
有難うございます。厚司の柄、いくつか調べましたが、頭がこんがらかってしまいました。
yuya様
そうですね、昔話のように見えますね。ユーカラは伝承されてきたアイヌ民族の物語ですから、それに倣えばやはり昔話のように聞こえますね。実際は、千代田線に乗って北千住に向かう途中乗り込んで来た人々から連想して書きはじめたのです。
by アヨアン・イゴカー (2013-07-07 21:37)