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栗の里の愉快な女房 - 知らぬは一時の恥、知っているつもりは一生の恥 [栗の里の愉快な女房]

1997-12-10 no.1.JPG栗の里の愉快な女房-知らぬは一時の恥、知ったつもりは一生の恥

2010-8-1 日曜日

 

 OD線沿線には金持ちの坊ちゃんお嬢ちゃんの通うT大学附属小学校、中学校がある。ある日電車で移動している時に、小癪にさわる会話が一度聞こえて来た。それは小遣い銭の自慢話を小学校低学年の生徒たちがしているのである。

「君のうちはいくらお小遣いを貰っているの?」

「僕のうちはですね、××円ですよ。」

「ほほう、結構頂いているのですねぇ。僕のうちは××円ですよ。」

「ちぇっ、負けましたね。」

「僕のうちはですね、××円くれていますよ。」

他の二人が驚いた様子。もっと驚いているのはこの会話を聞いていた私である。子供の頃自由に使える小遣いなど、まず殆ど貰ったことがなかった。貰っていた兄弟にしても、とてもこの小学校低学年の生徒の貰っていた金額とは比べ物にならない。お祭に遊びに行っても、少しばかりの小遣いでは殆ど何も買えないのだった。

 

 私は女房殿にこの話しをしてみた。

「それは親が悪い。自分の稼いだお金でもないのに、恰も自分の物のように語るのはね。」

「そうでがしょう?」

女房殿は言いたいことが貯まっているようで、直ぐに話題を転じてしまった。

「それも面白いけどさ、もっと面白いことが今日あったのよ。」

「何でござる?」

「近所に麦畑あるでしょう。」

「あぁ、私の大好きな麦畑ね。あの麦たちがゴシック様式の教会のように、天に向かって穎を伸ばしている場所ね。」

「今日買い物に行って戻ってくる時、下校するTK中学校の生徒達と行き逢ったの。その中の一人のとても賢そうな少年がね『あんなにエノコログサを植えて、一体全体どうしようと言う魂胆なのでしょうね?』って同級生に言うの。同級生が『へぇ、あれってエノコログサって言うの?君、よく知っているね。』と感心して言うの。そうしたら『別段、大した知識ではありませんよ。僕にとっては常識程度のものですよ。』とさも自慢そうに言い放つではありませんか。」

「無知は恐ろしいねぇ。」

「恐ろしいわねぇ。私ね、彼らの前で噴出しそうになっちゃった。必死で堪えながら帰ってきたのよ。」と思い出し笑い。私も釣られる。

「他人事だから笑っていられるけれど、自分でも似たようなことをしていないか、ちょっと心配になったわ!」

「確かに、人の一寸我が一尺ですからね。」

「あの子は一体どのような状況になったら、あの子のエノコログサが麦だったって分かるのかしら?分かった時、どんな反応するのかしら?」

「そうですね。自分が正しいと信じていたものが間違っていたと認識した時、人は自分自身が否定されたように感じることもありますからね。

偉そうなことを言っておりますが、私だって、小麦、大麦、ライ麦、裸麦の正確な区別はできませんからね。名前を知っているだけで、これは知っていることにはなりませんからね。人のふり見て我がふり直せ。あぁ、気をつけよう。」

 

小学校の時、私の担任の先生が「最近の子供達は稲を見たことがないそうだよ。君たちは大丈夫かな?だから遠足で田圃を通りかかった時に、『先生この雑草は何と言う名前ですか?』と聞いたそうだ。食べているお米のことを知らないんだよ。君たち、驚かないのかな?」と言って呆れていたのを思い出す。私は稲のことは水稲も陸稲も知っていたが、世田谷区の同級生たちで知らない子がいても不思議はないと思った。一度理科の時間のために「誰かツユクサを持って来てくれるかな?」と問いかけたが皆ツユクサがどのような草か知らないと言った。ツユクサなら畑では雑草として嫌われているので、私は好く知っている。手を挙げて「僕、持ってきます。」と言ったことがある。尤も、そう言ったのはよかったが、当日電車に乗る少し前に思い出して、焦って線路際を探して見つけ出してランドセルに放り込んで持って行ったのだった。

(*今回の絵は、カイゼル髭の猫、That's itと指さしている鳥と同じ大学ノートに描いてあるもの。どんぐりの背比べの印象が、今回の文書に相応しいかもしれないと思い掲載。)


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コメント 13

ぼくくま

すごくインパクトがあって良い感じですね。
絵を描けるって素敵ですよね。
by ぼくくま (2010-08-02 07:02) 

SILENT

大磯にて「ビゴーの漫画」を見ていただきたかったのですが
炎暑に30分の、国道に並木が伐採された環境では、来られる方も少ないと感じました。どんぐり いいですね。ブログでビゴー作品載せますのでお越し下さればさいわいです。
by SILENT (2010-08-02 09:26) 

lamer

暑中お見舞い申し上げます
by lamer (2010-08-02 13:37) 

yakko

こんにちは。
私は植物、昆虫・・・殆ど知らないのでちょっと心配です。(;゜ロ゜)
by yakko (2010-08-02 13:45) 

うに

ワタシも、知っているつもりのコトが、沢山ありそうです。
最近もダンナと話していて、大笑いしたことがあります。
これから、どれだけの笑い話が出てくるのか、
楽しみでもあります。(笑)
by うに (2010-08-02 15:02) 

matcha

面白いですね。
小遣いの話で盛り上がるのかと思ったら、麦とエノコログサの方へ行ってしまうところが、女房殿らしくて・・・。
しかし、そちらの方が話が広がりましたね。
身に詰まされます。
by matcha (2010-08-02 22:25) 

mimimomo

こんばんは^^
知っているつもり、知ったかぶり、、、怖いですね。気をつけよ~わたくしも。
by mimimomo (2010-08-03 21:48) 

青い鳥

>人の一寸我が一尺
私も気をつけなければ・・・・
by 青い鳥 (2010-08-05 15:05) 

雉虎堂

子供たちと共通の知識が
どんどん少なくなってきて
授業をする時のフックになるものが
なかなか見つかりません


by 雉虎堂 (2010-08-05 21:19) 

アヨアン・イゴカー

nyankome様、悠実様、schnitzer様、kaoru様、sak様、kuarakichi様、ぼくくま様、野うさぎ様、mokamoka様、SILENT様、大善士様、もめてる様、サチ様、くらま様、lamer様、yakko様、うに様、桜貝の想い出様、くーぷらん様、りんこう様、えれあ様、兎座s間、リュカ様、よっちゃん様、flutist様、はくちゃん様、matcha様、今造ROWINGTEAM様、optimist様、doudesyo様、+k様、ChinchikoPapa様、水郷楽人様、HAL様、ぼんぼちぼちぼち様、moz様、父ちゃん様、mimimomo様、てんとうむし様、扶侶夢舎様、zak様、ナカムラ様、PENGUING様、bee-15様、Mineosaurus様、旅爺さん様、ソラ様、miffy様、青い鳥様、雉虎堂様、江州石亭様、chiho様、ごんちゃん様、kakasisannpo様、Krause様、ラクダ様、tsuka様、アリスとテレス様、orange-beco様、galapagos様、ひろきん様、ユーフォ様、mitu様、さとふみ様 皆様 nice有難うございます。
by アヨアン・イゴカー (2010-08-08 10:51) 

アヨアン・イゴカー

ぼくくま様
絵を描いていると、無心になれるのです。不思議です。

SILENT様
戯画を描くためには、批評精神、皮肉な視点が必要ですが、ビゴーはそれが豊かですね。どちらかと言うと、意地の悪い視点に近いかもしれませんが、観察力が優れているからにすぎません。

lamer様
日向が恐ろしい日々が続きますね。

yakko様
自分がどのように知らないのか、何を知らないのか、いつも冷静に見極めたいと思っています。

うに様
思い違い、勘違い、思い込み、沢山ありますね。別段知ったかぶりしようとしたわけではなかったのに、実は説明しようとしたら自分が知らないことが分かる、そんなことばかりです。

matcha様
導入を書いていたら長くなりそうになり、慌てて削除して、本題にはいりました。

mimimomo様
旅行の写真、いいですね。清々しさが溢れていて。

青い鳥様
目くそ鼻くそ。しかし他人のことばかりよく目に入ります。目は外に向かって開かれているものですから。

雉虎堂様
文化の変化がもっとゆったりしていた時代、親の経験は子供の経験に重なる部分が沢山ありました。しかし、最近のように生活空間、都市、農村などにおける空間の変化、メディアの変化、価値観の変化が大きすぎると、共通項は少なくなってしまうのでしょうね。「ふるさと」に歌われるような風景、感情は現代の子供達にとっては異国情緒さえ感じさせる代物なのかもしれません。
by アヨアン・イゴカー (2010-08-08 11:20) 

youzi

きのことドングリ、可愛いですね。
どちらも文句言っているような顔がいいですね。
by youzi (2010-08-08 19:55) 

YUYA

考えさせられる子どもの話題ですね。
by YUYA (2010-08-08 20:18) 

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