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栗の里の愉快な女房 - アピヨン族 [栗の里の愉快な女房]

2010-7-4日曜日

栗の里の愉快な女房 - アピヨン族 

 夜な夜な鎧を着たその武士(もののふ)ようったは、一体らいろうか。猛々しい面々って攻撃だ。

 私は大好きなウィリアム・ブレークの水彩画展を観に行った時に、その図録を買ってきた。その中の一枚がなぜか矢鱈に気になって仕方がなかった。それはレオナルド・ダ・ヴィンチの素描に共通するものがあった。形、風貌や体形が、他者との相違によって目を奪ってしまう形とは何かと言う問題の提起である。ピカソの泣く女の絵やアビニョンの女達なども、普通ではなく見た者の脳裏にその印象を焼き付けてしまう。どのような要素を組み合わせると、或いは反対に取り除いてしまうと、陳腐なものが特異なものに変化してしまうのだろう。芸術家たち、それ変人たちは、そういう隠された未知の魅力を求めて日夜東奔西走、白河夜船を決め込んでいるのかもしれない。独自の世界を創り出そうと思ったら、自ずとそうなるのだ。生まれながらにしての性癖、傾向というものがあるので、自動的に己が進むべき道に従っているだけなのかもしれない。

 willian blake the ghost of a flea.JPGウィリアム・ブレークのその奇妙な絵は蚤の幽霊の頭部である。無気味なこの顔は私を大いに刺激した。人間は想像力の中で多くの怪獣やら妖精たちを作り出してきたのだが、例えばケンタウロス、一角獣、龍、玄武、人魚、フォーゲルグリフ、スフィンクス、キメラ、ラミア、牛頭、馬頭、天狗、河童、狼男、鬼など、少し思い出しただけでも簡単に名前が挙げられる。これらはどれも二種類以上の動物の合体したものである。ブレークはこうした異常さ、尋常ならぬもの、神秘的なものに引かれたに違いない。彼もやはり蚤に襲われて不快な時間を過ごしたのだろうか。蚤には過度に血に飢えた人間の霊が宿っている、とブレイクは語ったようであるが。そして十年以上前のことだが、私もこの絵に倣っていくつかの無気味な絵を描いてみた。ayoan fishman.JPG

 

 さて、女房殿は今朝も不機嫌である。なんとなれば、このところアピヨン族の攻撃に晒されて、安眠が出来なくなっているからである。木の床の上をアピヨ~ン、アピヨ~ンと跳ね回って、女房殿の足やら脛やら脹脛やら二の腕などを狙ってやってくるアピヨン族たちのために。

それでも女房殿には余裕がある。この鎧をつけた兵どもが獲物を狙って跳んで来る様を彼らになりきって演じることができる。「アピヨーン、アピヨーン!」と言いながら蚤になり切っているのである。なにしろ小さなゴキブリが小さな水滴の水を飲んでいる様がまるで鶏が水を飲んでいるようで可愛いと感じてしまう人なのだから、これくらいの感情移入はお茶の子さいさいである。

*一枚目の絵は、今日の文のために描いたブレークの絵のいい加減な写し。

**二枚目の絵は、10年以上前にブレークのこの絵に刺激されて描いた半魚人の絵。


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youzi

シーマンを思い出しました。
以前飼っていましたが、とっても憎たらしい事を
言うんですよ。
by youzi (2010-07-05 15:09) 

アヨアン・イゴカー

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by アヨアン・イゴカー (2010-07-11 20:18) 

アヨアン・イゴカー

youzi様
そういえば、大分前にテレビで紹介していましたね。小憎らしいことを言う人面魚ですね、確か?珍しいものを飼っていらっしゃったのですね。

by アヨアン・イゴカー (2010-07-11 20:21) 

青い鳥

2枚目の半魚人の絵、カエルの後ろ脚が付いているように見えて、
泳ぐより、ピョーン、ピョーンと水面を飛び跳ねそうな気がします。
私の前記事に優しく適切なお励ましのお言葉を頂き
言葉に尽くせぬほど感謝申し上げています。
有難うございました。
by 青い鳥 (2010-07-12 22:43) 

アヨアン・イゴカー

ミモザ様、glennmie様、赤と青様、大善士様、miffy様、青い鳥様、さる1号様、sig様、いっぷく様、野うさぎ様 皆様 nice有難うございます。

青い鳥様
言われて見ると、確かにオタマジャクシの変態のようにも見えますね。

経営だけではなく、人生全てにおいて共通する大事な問題だと思います。その人物に人生哲学があるかどうか、それは宗教でも、信念でもよいのですが、時代の流行、風潮に流されない確たる主義主張がなければなりません。それが無い者は三流です。三流の人間は共に語るに足りません。
他者に責任を押し付けるだけの、率先垂範できない経営者は即刻辞表を書くべきです。
by アヨアン・イゴカー (2010-07-17 10:02) 

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