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師岡正典さんの「ペン画のすすめ」の紹介 [評論]

 moro1.JPG今日は、奥多摩のペン画家、師岡正典さんの著書を紹介します。師岡さんは私の劇団木馬座時代に、大道具や小道具方のアルバイトとして入ってきました。飾り気の無い、自分の世界のある、寡黙でありながら諧謔の分かる冗談の好きな、好きになれないものにはお世辞にも好きとは言えない人。昼御飯に毎日カレーライスでも平気な人。

 そのモロさんが、個展を開いたり、朝日カルチャースクールなどでペン画を教えたりしているのは知っていました。新宿の高層ビルで開かれていたペン画の授業のある日、私はモロさんに一度会ったことがあります。Starbucksでお茶をしながら、とりとめもなく話をしていました。そう、私達はとりとめのない話をするのが好きなのです。特に目的のない「無駄話」も好いものです。その時にモロさんが、自分の技術をまとめた本を書かないかと出版社に提案されて原稿は用意してあるのだ、しかし、なかなか出版してくれないのよ、と言っていました。

 昨年末、私は御茶ノ水の下倉楽器でチェロセットを買いました。その報告をモロさんにメールでし、「何か変わったことはないのけ?」と聞いておいたところ、「2009年の2月に本を出したの知ってるかな?」と言う返事が来ました。

詳細は下記の通り。

『ペン画のすすめ』(線が織りなす懐かしい風景)日貿出版社 定価2,000+税

 moro2.JPG私は早速、丸の内の丸善の美術書棚に行って見ました。もし売れ残りの書籍として扱われていたら、入手が困難で、その場合には八重洲のブックセンターにも寄って確認しよう、或いは新宿のジュンク堂に行ってみよう、などと余計な心配をしていたのです。そうしたら、何と堂々と棚に入っているではありませんか!勿論、背表紙がきらきらと輝いていましたとも。素晴らしい。

 私は再びモロさんに「この本をブログで紹介してもよかっぺ?」とメールを送りました。「おう、どんどんやってくれ。」との返事。そこで我が友師岡さんの著書の出版を祝って、紹介することにした訳です。 

 私は絶対的な評価も必要ではあるが、相対的な評価もしておいた方がよいと考えました。親の慾目と他人の僻目では、どちらも公平さの欠けることになってしまいます。ですから、棚にあるペン画、鉛筆画、マーカーペン画などの本を何冊も手に取って見比べて見ました。まず、価格はモロさんの本が2,100円であるのに対して他の本は1,800円なのです。しかも、ページが少し多い。今のようなデフレ、値下げ競争が恒常化している今日、ページが多くて安い、これはこちらの本に飛びつく向きもいるのではないかと思った次第。しかしながら、モロさんの本の中味を見て、これは一頭地を抜いているのではないかと思いました。理由は単純で、持てる技術を全て惜しみなく本にするのが師岡さんの基本的な姿勢だとすると、他の本は、どれも寸止め或いは表面的な技法で止まっている印象を与えるからです。師岡さんは、恐らく、自分自身で手探りしたり、本や大家の作品から学んできたものを、そのまま本にしたと思えるのです。その描き方の好き嫌いは別にして、これだけやれば、最低限これだけの技術が習得できる可能性がある、という事を保証してくれている本なのです。尤も、職場にいるデッサンなどを教えているK先生は笑いながら「いくら例が細かく出ているからと言って、その本だけで描ける人は少ないですよ。だから美術学校があるんだから。」と言っていました。それは確かにそうですね。

 師岡さんについては、ジオシティーズの記事をご覧いただければ、もう少し詳しく知ることができます。moro3.JPGhttp://1st.geocities.yahoo.co.jp/gl/poetegenie/view/200708ttp://1st.geocities.yahoo.co.jp/gl/poetegenie/view/200708

尚、モロさんは、20代から30代前半に伽童(かどう)と言う雅号でkadoh_red_road_and_bluebirds.JPGペン画と全く異なる作品を描いていました。その一例が彩色されたこの絵です。私としてはこの伽童の世界をもっと発展させて欲しかったのですが、雲のたなびく山の庵だけでは生活できず、ペン画の世界に入ることになったのです。


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mimimomo

こんばんは^^
日貿出版にはこの頃縁がありますね~
これは昨年の2月ですか。それなら我が家にはないかも~
それ以前の本は時々我が家においてありますが・・・
近くの本屋さんで見てみましょう~
by mimimomo (2010-01-11 20:19) 

Mineosaurus

こんばんわ。『ペン画のすすめ』持っております。いろんなところでつながるのですねー。
by Mineosaurus (2010-01-11 21:03) 

doudesyo

今晩は。
お知り合いの方の本ってとても特別ですよね。しかもペン画とは。
私もちょっと気になるのでできる限り購入してみたいです。ただ忘れやすい正確なので確実とはいえないのですが。^^;
by doudesyo (2010-01-11 21:20) 

SAKANAKANE

絵心は無いので、描いてみようとは思わないんですが、見るのは好きです。
この彩色された絵、とても良い感じですね。
いつの日か、こちらの世界にも戻って来れると良いですね。
by SAKANAKANE (2010-01-11 21:52) 

くまら

あ、この本私も持ってます^^
by くまら (2010-01-11 23:15) 

にすけん

 手描きイラストとPC作画も比較研究していくと、手書き文書とワープロ文書のような、傾向的な表現力の違いが見えてくるんでしょうかね。どんな題材で、どんな画法で勝負するのかすら今は思いつけませんが…
by にすけん (2010-01-12 01:52) 

sig

類は友を呼ぶで、やはりすばらしい友人がいらっしゃるのですね。
とても繊細なペン画のようですね。私は少年雑誌で見ていた椛島勝一のペンが画が大好きでした。
チェロセットをお買いになって、楽しみと充足感が増えたようで結構ですね。

by sig (2010-01-12 09:46) 

asahama

新年のご挨拶が遅れましたが・・・
今年もよろしくお願いいたします^^

ペン画、描きたくなりましたー
by asahama (2010-01-12 19:55) 

yoku

彩色された絵は平和で何かホットさせます。
私のもこんな絵心があればいいのですが、、、。
by yoku (2010-01-12 20:56) 

すうちい

チェロセットをお買いになったんですね。
師岡さんの本、機会があったらぜひ見てみたいと思います。
by すうちい (2010-01-13 01:11) 

モロペン

ちゃうちゃう、モノクロで描く風景画、線画が好きなだけです。生活していけないからぺン画を始めたのではないです。伽童の世界も夢が湧くけどモノクロ(モロペン)の世界も夢が湧くだろう?結核療養してたときも思ったけど、今もいい友がいることをうれしく思うよ   じゃ
by モロペン (2010-01-15 20:55) 

YUYA

いいお友達ですね。まさしくアートの友ですね。
僕は技術的な本を見たことがあまりないのですが、
きっと見たら役に立つことがあるでしょうね。
by YUYA (2010-01-16 00:49) 

duke

紹介なさるのに他も色々見られたアヨアン・イゴカーさんも、グレードの高い本を出される師岡さんも、お二人の会話も素敵です^^
by duke (2010-01-17 23:20) 

アヨアン・イゴカー

はっこう様、kurakichi様、aranjues様、mouse1948様、スー様、もめてる様、雉虎堂様、takamovies様、甘党大王様、えれあ様、アリスとテレス様、kakasisannpo様、mimimomo様、くーぷらん様、Mineosaurus様、青い鳥様、doudesyo様、SAKANAKANE様、gyaro様、ゆきねこ様、野うさぎ様、くらま様、にすけん様、Krause様、よっちゃん様、mitu様、SILENT様、kaoru様、sig様、toraneko-tora様、izumi様、asahama様、ryon様、yoku様、ナカムラ様、扶侶夢舎様、Chinchiko-papa様、ピッピ様、すうちい様、schnitzer様、Maria様、yukitan様、チョコシナモン様、ララアント様、アヤメセブン様、ぶさいくたろう様、optimist様、ひろきん様,YUYA様、+k様、shin様、リュカ様、duke様、てんとうむし様 皆様 nice有難うございます。

by アヨアン・イゴカー (2010-01-18 00:06) 

Nyandam

習っても本を読んでもその通り描けるものではないですが、
すべてを伝えようとする姿勢で書かれた本は、とても値打ちがある気がします。

by Nyandam (2010-01-18 12:57) 

アヨアン・イゴカー

めぎ様、sak様、Nyandam様、Rebecca様 nice有難うございます。

by アヨアン・イゴカー (2010-01-18 23:39) 

アヨアン・イゴカー

mimimomo様
この出版社、ご存知でしたか?
絵の好き嫌いもありますから表現は難しいのですが、兎に角具体的な解説書だと思います。

Mineosaurus様
おぉ、何とお持ちでしたか。嬉しいお話です。

doudesyo様
知り合いの本、身内の出した本、そういうものは特別の意味を持っていますね。伯父吉江俊夫が自費出版した随筆集『折に摘む』『小河内日記』も、大切に持っています。

SAKANAKANE様
伽童の世界、好いですよね。
これとも異なる日本画的な絵や、ロマン派風なペン画も見たことがあるのですが、私には伽童の世界が気に入っています。

くらま様
持っていらっしゃる!?嬉しいです。
美術学校で教えているK先生が、この本を見て、どこまで詳細に描けばいいのか、ボリューム感の出し方などが書いてあるので、「そうなんだよね。」と言っていました。

にすけん様
将棋やチェスでPCと対決したりしますが、果たして芸術の分野はどうなのでしょう?理屈があるようでないのが芸術の本質だと思います。理屈を後から付ける、分析するとある法則が見つかるということはあるかもしれないのですが。

sig様
モロさんがペン画の世界に入ってゆく過程で、大きな風景画(2×4メートル位?)をサインペンやペンで描いたことがありました。金網に絡まる蔓や草を丹念に描いてゆくその根気に驚かされたものです。
チェロは、土日に練習しています。バイオリンに比べて遥かに大きく、弦も太いので、腕や指や肩が疲れます。

asahama様
今年も宜しくお願いします。
ペン画、面白いと思います。モロさんの教室に通っている方々で、とても見事な作品を描かれている方も見受けられます。

yoku様
伽童の世界は、遊び心があって、本当にほっとします。
yokuさんの撮られる写真は、非常に美しく、しばしば刺激を受けます。写真に於ける絵心だと思います。

モロペン様
ようこそお越し頂きました。
そうでしたか、生活に困ってペン画を始めたのではなかったのですね。大変失礼致しました。
確かに、モノクロの『お昼にはまだ早いけど』『眠りにつく大地』など、ペン画でこんなに深みと味わいが出せるものかと思ったものです。特に『眠りにつく大地』は、静謐・静寂の中で靄に包まれた生命の息吹を感じます。
くどいですが、伽童ももっと見たいのじゃ!

YUYA様
バイオリンの教則本のようなものですね。こう弾くと、美しい音色に聞こえるとか、こうやって弓を動かすと音がかすれないとか、そういう具体的なことが書いてある教則本です。
ご自身で世界を切り拓いて(切り抜いてゆく)YUYAさんには、教則本はないのでしょうね。

duke様
グレードが高いかどうかは、保証の限りではありませんが、実践的であることは間違いないと思います。親しみやすく分かりやすい、これがこの本の売りだと思います。
A.L.グプティル『鉛筆で描く』(スケッチから細密描写まで)と言う本を持っています。これも非常に実践的で具体的ではありますが、文字が多く、例に挙げられている絵が高等すぎる嫌いがあります。

Nyandam様
この本の中に、全てを惜しげもなく伝えようとする姿勢を感じます。
それは辛いことでもありますが、自分自身を更に高めるためには必要なことでもあります。
by アヨアン・イゴカー (2010-01-19 00:30) 

アヨアン・イゴカー

すうちい様
チェロセット買ったのであります。
数年後後悔しないために、買いました。昨年、年初に買おうと考えたのですが、まず妻の持っているバイオリンを練習して、一定水準にすることが先決と考えたのです。兎に角、バイオリンもチェロも楽しいですよ。特にチェロは、音階の練習をしていると、セロ弾きのゴーシュのような気分になります。賢治の「星巡りの歌」なども弾きます。

師岡さんの本は、ご覧いただけると幸いです。
by アヨアン・イゴカー (2010-01-20 00:05) 

mimimomo

再び~
こんばんは^^
うちの近くの本屋さん3軒で探しましたが、売ってなかったです。
やはりちょっと出版後日にちがたっているから、
大きな本屋さんじゃないとダメなのかもしれないですね~
by mimimomo (2010-01-22 20:00) 

アヨアン・イゴカー

めぎ様、sak様、Nyandam様、rebecca様、旅爺さん様、さとふみ様、miffy様、アマデウス様、ムク様、ミモザ様、isida様、ciscokid様 皆様nice有難うございます。

mimimomo様
二度もご訪問頂き有難うございます!
3件も回って頂いたのですか。嬉しいです。そうですね、やはり大きな本屋さんでなければ売っていないのかもしれません。

by アヨアン・イゴカー (2010-01-24 23:35) 

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