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宮沢賢治『オッペルと象』より『象たちの集結』 [宮沢賢治]

angry elephants heading for the Oppel factory.JPG 今日は書き始めてから二週間以上も経ってしまっている音楽を公開致します。交響的組曲あるいは単なる舞台音楽『オッペルと象』の第四曲です。単純に四番目に書き上げたと言う意味で、物語の第四番目にくる曲ではありません。
 場面は第三日曜。・・・象は一斉に立ち上がり、真っ黒になって吠え出した。「オッペルをやっつけよう。」議長の象が高く叫ぶと、
「おう、でかけよう。グララアガア、グアララアガア。」皆が一度に呼応する。
 さあ、もうみんな嵐のように林の中を突き抜けて、グララアガア、グララアガア、野原の方へ飛んで行く。どいつもこいつもみんなきちがひだ。小さな木などは根こぎになり、藪やなにかもめちゃめちゃだ。グワアグワアグワアグワア、花火みたいに野原の中へ飛び出した。それから、何の、走って、走って、とうとう向こうの青くかすんだ野原のはてに、オッペル邸の黄いろな屋根を見付けると、象は一度に噴火した。(筑摩書房 現代日本文学全集 24 p347)
  今日描いた絵は、その象たちが突進する場面です。使用したのは三菱4B鉛筆、ゼブラ黒ボールペン、シェーファー万年筆、水彩色鉛筆。えれあさんの撮られた上野動物園の象の写真を参考に、ウィキペディアの象の写真なども参考にし構成。
 ところで、昨日本当に久しぶりにピアノの調律をしました。恥ずかしくて何年放置していたかは言えませんが、兎に角あちこち満身創痍状態のピアノでした。調律師は来て音を出して「大分狂っているね。」と言います。「一音程位下がっているね。」そう言ってから音叉を取り出してイ音440サイクルを確認すると、一全音の三分の一位狂っていました。「いやぁ、これは大変だ。生協でやると安いからと言うんで、いろんなお客さんが注文するんですよ。酷いのは大正時代のピアノの調律を頼むって人もいるの。」これには私も驚きましたが。ペダルはキーキー言うし、鍵盤はすきっ歯状態、G#ピアノ線は切れているし(最近切れて耐えられなくなったのです)、ピアノ線は錆び付いているし、アクションを取り出そうとすると湿気でひっかかるし・・・「調律する前にこんなにやることある。」と言って、彼は半ば困った顔をしながらにこにこしています。

 結局、予定の時刻よりも一時間半遅れて到着したかれは、一応の調律を修了するまでに三時間掛かりました。以前、タカギクラヴィーアの高木さんにお願いしていたので、時間はこれくらい掛かるものとは思っていました。切れていたG#のピアノ線は、高音で肝心の一本を工場に発注しなければならないことが分かり、今日は一旦仮の調律をしておきましょう、と言うはなしになったのでした。
 調律の結果、これはお世辞にもよいものではありませんでした。まるで、ダンパーペダルを踏んだような音になってしまい、弾きたいと言う意欲が殺がれてしまいます。妻に弾いてみてもらうと「あぁ、これは弾く気にならない、耳が変になりそう。これだったら、昨日のホンキートンク状態の方がましだった。」と言う始末です。早速、調律師の会社に私は連絡しました。まだ、彼とは話すことができていませんが、もし彼が元の音に戻せないのであれば、別の調律師にお願いすることになります。
 


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コメント 17

sig

こんにちは。
絵が画けて、作曲・演奏までおやりになるアヨアン・イゴカーさんを、
いつもうらやましく思っております。
愛嬌があるかわいいゾウさんですね。
音楽も雰囲気が良く伝わってきました。
ピアノの調律、大変でしたね。
音程はいまいちだったようですが、手入れをしたことにはなったのですよね。
by sig (2009-08-09 17:58) 

えれあ

象達が攻めてくるがの感じられました。
by えれあ (2009-08-09 18:22) 

yakko

こんばんは。
芸術家のアヨアン・イゴカーさんを尊敬します。
ゾウの絵、迫力&躍動感あります。(^。^)
by yakko (2009-08-09 21:16) 

orange-beco

穏やかだけど何かが起こりそうな予感。
グララアガア、グアララアガアと叫ぶ像の怒りが感じられました。
by orange-beco (2009-08-09 21:50) 

Krause

宮沢賢治の大ファンで、「オッベルと像」も大好きです。像の鷹揚さとオッペルの狡さがユニークですね。
by Krause (2009-08-10 05:02) 

doudesyo

おはようございます。
いつもながら見事なイメージを彷彿とさせる曲です。ゾウたちが拳を突き上げというか鼻を突き上げて行進する感じが伝わります。この間、ライオンキングを見に行きました。子供と一緒にです。本格的舞台でのディスプレイや演出を久しぶりに見ました。いろいろと考えさせる事がありましたが。
調律も大変でした。お金を払う以上は、きちんとして欲しいものです。
by doudesyo (2009-08-10 07:35) 

Cecilia

最後まで聴かせていただきました。
実はまともに読んだことがないのですが(苦笑)、この曲での舞台を見たくなりました。
調律の件、大変ですね!
私も引っ越した時に調律して以来数年していません。
以前は年に一回はしていたのですが・・・。
近いうちに調律したいです。
恥ずかしくて言えないと思っていましたが、アヨアン・イゴカーさんもそうだと知ってほっとしました。(笑)
by Cecilia (2009-08-10 09:23) 

ナカムラ

宮沢賢治だいすき!です。調律、今年のはじめに当家もお願いしました。女性の調律の方でしたが、あきらかに演奏も上手と分る方で、完成を確かめるために一曲弾いていってくれました。その音を聞いて安心したものです。困りましたねえ・・・。
by ナカムラ (2009-08-10 12:52) 

くーぷらん

自分でチューニング&メンテナンスをするのが当たり前の楽器を演奏していますので、ピアノを弾く人たちから調律師の話題が出てくるたび、いつも違和感を覚えます。そういうものだと頭では分かっているんですが。
by くーぷらん (2009-08-10 15:01) 

sak

象が鼻を振り回しながら
どんどん迫ってくる姿想像しちゃいました
ピアノの調律って難しいでしょうね

by sak (2009-08-10 20:50) 

mimimomo

こんばんは^^
宮沢賢治はあまり好みじゃなく『オッペルと象』も知りませんが
絵を見て、文を読むと立体的な様子が想像できますね~
迫力満点です。
我が家もピアノの調律、もう長い間やっていません(__
by mimimomo (2009-08-11 19:14) 

いっぷく

イメージと音楽があっていますね、管楽器とドラムの音が
緊迫感を伝えていますね。
ピアノの調律の見学するのも好きです。
相当な力が内部でかかっているので弦が緩むのは避けられないんでしょうね。
by いっぷく (2009-08-12 18:23) 

SAKANAKANE

とてもリズムを感じる文章ですね。
ピアノの調律といったモノには、全く縁が無かったので、もっと単純なコトを想像していました。
by SAKANAKANE (2009-08-12 21:13) 

アヨアン・イゴカー

アリスとテレス様、HEIJI様、sig様、yasumi様、えれあ様、orange-beco様、うに様、duke様、yakko様、お茶屋様、チョコシナモン様、扶侶夢舎様、スー様、さとふみ様、Krause様、弁慶様、ゆきねこ様、doudesyo様、Cecilia様、くらま様、kaoru様、Chinchiko-Papa様、釣られクマ様、エア様、ナカムラ様、りぼん様、もめてる様、siroyagi様、くーぷらん様、kakasisannpo様、olive様、sak様、kugiri様、symplexus様、lapis様、mimimomo様、mitsu様、旅爺さん様、mouse1948様、flutist様、A.ラファエル様、shin様、+k様、いっぷく様、chee様、SAKANAKANE様、夢空様、ムネタロウ様 皆様 nice有難うございます。
by アヨアン・イゴカー (2009-08-13 14:40) 

アヨアン・イゴカー

sig様
嬉しいお言葉有難うございます。このところ長く中断していた絵に、どんどん面白さを感じるようになっています。昨日は、十年間保留にしていたくまのプーさんの絵に色を塗っていました。近々公開します。
調律は、なんと、今日突然調律師のYさんが来られるという連絡があり、今後ろで調整中です。ハンマーのフェルトが水気を吸って、スポンジ状態になっていたという原因が分かったので、私も安心しています。

えれあ様
金管楽器が象の叫び声、その他は必ずしも何かを示しているわけでもないのですか、感じ取って頂けて嬉しいです。

yakko様
>尊敬します。
このコメントで、有頂天になっています。きゃー嬉しい!

orange-beco様
後半二拍子になるのですが、まさにこのグララアガアを表しています。聞き取って頂き有難うございます。

Krause様
私は賢治に小学校の頃から大きく影響を受けてきました。この『オッペルと象』には、労働争議の臭いを感ずるのです。弱者の立場で物を見ていた賢治なら、こういう発想をしても自然です。

doudesyo様
「ライオンキング」舞台装置、凄いでしょうね。あの人間でいかに動物らしい造形を作り出すかの工夫、初めてテレビで広告を見た時、すっかり魅了されてしまいました。自由な発想が随所に見られて、劇団で制作をしていれば、間違いなく参考にさせてもらっていたと思います。
ピアノは今日、音量の調整をしてもらい、再調律してもらっています。

Cecilia様
大分大昔には年に二回調律していたのですが。やらなくなると、もうなんだか、もう少し我慢してからなどと考え、我慢大会みたいになってしまいました。今後は、定期的に調律します。好い音と言うのは、創造力を高めてくれるものです。

ナカムラ様
賢治大好きですか。私は、宮沢賢治の作品を音楽化することを、人生の目標の一つにしています。今のところ、『かしわばやしの夜』『銀河鉄道の夜』が、一応完成しています。途中になっているのは『セロ弾きのゴーシュ』『グスコーブドリの伝記』『よだかの星』などです。

くーぷらん様
確かに弦楽器はそうですね。バイオリンを練習していますが、正確な音程を刻むために、指練習が欠かせませんが、何より耳が鍛えられていると感じています。

sak様
何しろヤマハのG3と言うピアノですから、結構年数も経っており、あちこち問題も多いのです。セロ弾きのゴーシュのセロのように。

mimimomo様
今回調律して後悔しているのは、今まで調律を怠ってきたことです。定期的にやっておかないと、ピアノそのものの音色を楽しむことができなるなってしまうからです。

いっぷく様
何しろとんでもない期間調律しないでいたので、伸びる(緩む)のは当然すぎることなのです。以前、高木さんが「調律終わりましたよ。験し弾きどうぞ。」と言うので、調子に乗ってショパンのエチュードの出だしを思いっきり鳴らしたら「あっ!狂っちゃう。」と言われました。それくらいデリケートなものなのでしょう。心境としては、白砂の庭を掃き清めた直後に足跡をつけられるような気持ちになったのかもしれません。

SAKANAKANE様
宮沢賢治の文章には、他にも『どんぐりと山猫』と言う作品なども、実に語呂がいいところがあります。
タカギクラヴィーアの調律師の高木さんからピアノについていろお話を聞いているうちに、『ピアノ常識入門』(ムジカノーヴァ叢書)の本を買って、私も少し勉強しました。
楽器と言うのはピアノに限らず、どれも奥が深いと思います。
by アヨアン・イゴカー (2009-08-13 15:30) 

Page Voice

はじめまして。マイサウンドのユーザースペースでこの曲を聴かせていただきました。その現代的な音の素晴らしさに圧倒されて、こちらにも来てみました。

賢治の作品の音楽化が人生の目標の一つ、とのコメントにもとても感激しました。
わたしは自分のサイトで朗読をしていて、賢治の詩と童話をたくさん読んでいます。(春と修羅の完読を目指していましたが、目下中断中)

「オッペルと象」も読みましたが、不可解な箇所も多くて気になる作品です(余談ですが、現在では「オツベル」の表記が正しいと賢治研究者の間では言われているようですね。わたしが子供の頃に読んだ本では確かに「オッペル」でしたが)

他の記事もとても読み応えがあって、アヨアン・イゴカーさんの並々ならぬ知性を感じます。
これからもときどきおじゃまさせてください。

お気が向きましたら、わたしのサイトもご覧になってくだると嬉しいです。
稚拙なものですが朗読用の音楽づくりもしています。

by Page Voice (2009-08-19 22:11) 

アヨアン・イゴカー

Page Voice様
お越し頂き有難うございます。
宮沢賢治は、私という人間の一部を形成に影響を及ぼした要素であると思います。小学校の時、母に薦められて読み始めたのですが、気づかないうちに、私の物の考え方を決めてしまったかもしれません。
今後とも宜しくお願いします。
by アヨアン・イゴカー (2009-08-23 23:02) 

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