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The Beatles - Eleanor Rigby [音楽]

  今日はThe BeatlesのEleanor Rigbyについて書いてみたいと思います。
 ビートルズについて語るとき私は詩人の友人NB君のことを語らずにはいられません。劇団木馬座で出会った彼は、私がビートルズの世界へ入ってゆくciceroneでした。彼がこのバンドの素晴らしさを教えてくれたのです。一方、ビートルズ狂いのBB君が熱く語り、自分は生まれて来たのが遅すぎた、ビートルズ世代でなかったことが悔しいと言った時、私は何の影響も受けることはなかったのでした。こんなNB君のことは劇団木馬座の思い出の一環としていつか紹介したいと思います。
 1993年末頃でしょうか、独学主義の私はやっとヤマハのシンセサイザーのシーケンサーの使い方を理解したのでした。それまでは親友HS君のくれたオープンリールのテープレコーダーとミキサーで四苦八苦しながら録音し、ついには挫折してやる気をすっかり失っていたのでした。シンセサイザーの解説を読んでいて、シーケンサーなるものがあり、それが多重録音に至って便利なものであると言うことが分かったのでした。それまではミキサーを使わなければならない、と固定観念に囚われていた訳です。分かった時、私はそれまでの3年間の徒労を恨みました。しかし、無駄に見えることをして成長する生き物なのだと思っています。
 このV50では、まずバッハの『G線上のアリア』やらボロディンの『ダッタン人の踊り』やらドボルザークの『チェロ協奏曲』の抜粋を録音しました。それをカセットテープに録音して、NB君に上げました。彼、それをしっかりと聴いて批評してくれました。それに感謝の意味を込めて、彼を喜ばせようとThe Beatlesの曲の録音を始めました。Yesterday, Michelle, And I love her, Strawberry Fields Forever, The Fool on the Hillの5曲でした。彼はまたそれを聴き込んで感想を述べてくれるのでした。「編曲と言うのは偉大だ。おんなじ曲と思えないほど立派になったり、つまらなくなったりするんだもの。」「このAnd I love herは、僕を救ってくれたんだ、落ち込んでいる時何回も何回も聴いたんだ。」
 さて、今回の表題にしているEleanor Rigbyについては、こんな思い出があります。1年位前のことですが、姉とビートルズの話をする機会がありました。私の長姉は昔からのビートルズファンでした。ビートルズの特集を録画したビデオを見ていた時のことですが、Eleanor Rigbyが流れると、話を中断し引き寄せられるように画面の方を見たのです。その目にはうっすらと涙が浮かんでいるように見えました。この記憶について、姉にメールを送って聞いてみました。以下が姉のからの回答です。
白状するとビートルズに対して尊敬の念が生じたのがこの曲聴いてからだったと思う。詩の内容に感動しちゃったんです。英語がわからないから何かで訳をみてすっかりビートルズファンになったという訳。特に私はポールが好きなんです。メロディーが美しいもの!
ところでかんじんの何で泣けちゃったかということですが~当時の私の閉塞感、孤独感、理不尽な社会に対する怒りと絶望感が
この曲に重なったんでありましょう。本当にこの曲を聴いていたころの私はみじめな気持で自分の存在すら許せないところにいましたから・・・」
 この文面からすると、姉は私が彼女の涙を見た時期を随分遡って昔のことだと思ってしまったようです。私は姉のこの感想と全く同じ感情をこの曲に対して抱きました。閉塞感、孤独感、理不尽な社会に対する怒りと絶望感。何と適切な表現でしょう。歌詞と音楽とが不可分の物として、全き一体となっているのです。
 歌詞を以下に紹介致します。出典は新興楽譜出版(発行日昭和47年6月15日第七版)『BEST LENNON & McCARTNEY』です。
 Ah. Look at all the lonely people.
  Eleanor Rigby picks up the rice in the church
  Where a wedding has been
  Lives in a dream
  Waits at the window, wearing the face that she keeps in a jar by the door.
  Who is it for?
  All the lonely people.
  Where do they all come from?
  All the lonely people.
  Where do they all belong?
  以下省略
 
 この曲について書くために、私は今日挿絵を一枚描きました。その姿のモデルは国吉康雄の『誰かが私のポスターを破った』です。あの社会に裏切られた女優のポーズがEleanor Rigbyに相応しいと考えたのです。私の頭の中で、ここ一週間以上鳴り続けているこの曲に。
SSCN0282.JPG
 私はこの歌詞は高校の時に使った教科書に引用されていたCecil Day LewisがPoetry for Youと言う書物で紹介している詩に似ていると思いました。それは名前の分からないランカシャーのバラード詩人が書いたAs I was going down Treak Streetと言う詩です。詩の一部は下記の通りです。
 As I was going down Treak Street
  For half a pound of treacle,
  Who should I meet but my old friend Micky Thumps.
  He said to me, 'Wilt thou come to our wake?'
  I though a bit,
  I though a bit,
  I said I didn't mind:
  So I went.
 (省略
 And he were ill:
  He were gradely ill.
  He said to me,
  'Wilt thou come to my funeral, mon, if I die?'
  (省略)
 And it were a funeral.
  Some stamped on his grave:
  Some spat on his grave:
  But I scraped my eyes out for my old friend Micky Thumps.
 私は高校を卒業して大学に入ってからこの詩を読み直して、痛く感動したものです。そして、いつかこの詩に曲を書こうと思い、一部を大学時代に書きました。そして、9年ほど前にギターとハーモニカの音を使って書き上げました。
 親友HS君は、この曲をとても気に入ってくれました。初めて世の中に公開します。
 

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flutist

素晴らしい曲ですね。どこか哀愁のような感情を抱かせるような・・・。
by flutist (2009-05-25 20:12) 

えれあ

難しい事はわかりませんが、私もとても気に入りました。
by えれあ (2009-05-25 20:14) 

mimimomo

おはようございます^^
曽野綾子さんが『一見無駄なことでも、何かの役に立つ』と言うことを何かに書いていらっしゃいました。
全くそのとおりだと思います。
音楽に対し無知なわたくしも、シンセサイザーと言うものを知った時は
ちょっと自分で触って見たいなぁ~なんて気にさせられた、画期的なものだという印象があります。やはりそうなんでしょうかね・・・
朝が早いので音楽は聴けません。また後ほど聴きに伺います。
by mimimomo (2009-05-26 04:22) 

yoku

しばらく田舎で過ごし、帰ってきました。
そこは、すばらしく静かなところでした。
そして昨日、アヨアン・イゴカー様のこの曲を
聞こうとしましたが、私のパソコンでは外の
雑音が災いしてよく効けませんでした。
今こうして早朝に聞くと素晴らしくよく聞けました。

by yoku (2009-05-26 05:26) 

yakko

お早うございます。
私がビートルズの素晴らしさを知ったのは年取ってからです。
昔は演歌人間でしたから・・・f(^ー^;
by yakko (2009-05-26 08:56) 

北国の帝王

山下達郎さんが「情熱を持ったロックンロールは、懐メロにならない」と仰っていました。ビートルズもまさに当てはまりますね。
そして曲に対する深い愛情と尊敬を感じました。
by 北国の帝王 (2009-05-26 14:16) 

mimimomo

再び~
元の曲は知らないのですが、哀愁漂うような、そんな印象を受けました。
by mimimomo (2009-05-26 18:24) 

aranjues

エリナーリグビー、ビートルズの曲としては
メジャーとは言えない曲ですが、私も好きです。
ただ、この曲をこんなに掘り下げて考えたことは有りませんでした。
by aranjues (2009-05-27 00:54) 

chan_yukky

「Eleanor Rigby」は名曲ですよ。「Yesterday」同様、ポールしか
レコーディングに参加してないので、「ビートリー」ではないけれど^^;
ポールはお気に入りのようで、「セルフ・カヴァー」もしてます。
あとライヴでも、よく演奏してますね^^
by chan_yukky (2009-05-27 14:47) 

にすけん

 シーケンサーに限らず、楽器人種が電子化に感じた抵抗はただならぬものがありました。実は私も『電子化は悪』と、今思えば不可解なほど毛嫌いしていたのを思い出します。
 その後、おのれの矮小さを衝撃的に認識し、後悔を経て今に到ります。
 私一人ではなかった、あの楽器人種の共通した感情はなんだったのだろう…
by にすけん (2009-05-28 11:12) 

ムーミン

哀愁がある、いい曲ですね。聞く機会が少ないだけに、新鮮な感じがします。
by ムーミン (2009-05-28 22:16) 

doudesyo

おはようございます。
んー、素晴らしいです。やはりこういう素晴らしい仕事が出来る方というのは、人生の達人の方ですね。音楽はめっきりダメですが、国吉康雄の画風は日本画調のラインをいかした独特の白を使う感じで大好きですよ。デフォルメも時代を感じさせるもので懐かしい感じです。^^;
by doudesyo (2009-05-29 06:19) 

duke

素敵な曲ですね。
そしてエリノアリグビー、大好きです。

by duke (2009-05-29 22:49) 

SAKANAKANE

こういう時に、英語を分からない自分の無能さが恨めしくなります。
お姉様も、芸術家肌なのでしょうか?
by SAKANAKANE (2009-05-29 23:35) 

アヨアン・イゴカー

lapis様、takemovies様、kaoru様、toraneko-tora様、サチ様、Krause様、お茶屋様、まっと様、Chinchiko-Papa様、TOMO様、アリスとテレス様、flutist様、えれあ様、mimimomo様、さとふみ様、yoku様、yakko様、北国の帝王様、アマデウス様、イリス様、olive様、aranjues様、SILENT様、たね様、chan_yukky様、くらま様、父ちゃん様、shin様、にすけん様、ムーミン様、doudesyo様、kakasisannpo様、chee様、duke様、SAKANAKANE様、くーぷらん様、zenjimaru様、旅爺さん様 皆様 nice有難うございます。
by アヨアン・イゴカー (2009-05-31 00:54) 

アヨアン・イゴカー

flutist様
有難うございます。私はこのバラードを読んだとき、存在の希薄さのようなもの、疎外感のようなものを強く感じMickey Thumpsに同情を禁じえませんでした。そしてI thought a bit、I didn't mindと言って彼を理解した友人が私にも必要なのだと思いました。墓を踏みにじったり、唾を吐きかける人さえいたMickey Thumps。しかし、友人は、眼を掻き毟り友の死を悼みます。

えれあ様
Eleanor Rigbyをでしょうか、As I was going down Treak Streetをでしょうか?この二つの詩には、共通項があると思います。

mimimomo様
この世に無駄なことなど一つもないと、私も思います。
曲をお聴き頂き、有難うございます。哀愁漂っていますか?確かに、このバラードを読みながら、この曲を書きながら、私は悲しい気分になっていました。

yoku様
静かな環境で、聴いて頂けたのは幸いです。有難うございます。
この曲には、騒音は相応しくないと思いますので。

yakko様
年を取ってからでも、素晴らしいと感じさせるビートルズは本物ですね!私は、ビートルズは古典になると信じています。

北国の帝王様
ビートルズの音楽の底に流れているのは、溢れるばかりの感情、感動と、革新的な考え方、そして自分達のやり方への自信だと思います。

aranjues様
名曲には、往々にして、その曲ができるための由来があるのではないかと思っております。

chan_yukky様
そうですよね。名曲ですね。私は聴くたびに鳥肌が立つような、泣きたくなる様な気分になります。別に、泣いたりはしませんけれど。

にすけん様
私は、本来アナログ人間です。最初はリコーダーから、次にフルート、そしてピアノに入ってゆきました。
私はもともとオーケストラになみなみならぬ執着があって、どうしてもオーケストラ曲を書いて、録音したいと思っていました。その願望を満たしてくれたのがシンセサイザーであり、シーケンサーだったのです。

ムーミン様
Eleanor Rigbyに限らず、名曲は常時放送されているわけではありませんので、時々自分から近付いてゆかないと聞くことができないですね。今回は私もYouTubeで、何回も聴き、ピアノで弾いて、その感動を新にしました。

doudesyo様
国吉康雄大好きですか?好いですね、あの色使い、線。独特で。
日本人の画家で好きな人はあまり多くいませんが、国吉は好きです。

duke様
Eleanor Rigby同好会ですね!

SAKANAKANE様
姉は、芸術肌と言えるかどうか分かりません。夢見る人間であることは間違いありません。私達兄弟が小さかった頃、姉は童話を読んでくれたり、クリスマスパーティの準備を先頭に立ってやってくれたり、兎に角、雰囲気作りの名人でした。学研に勤めていた時は、文房具のビクトリアカードと言う商品の宣伝を担当していました。
姉と私とは好みの共通点が、結構多いのかもしれません。

by アヨアン・イゴカー (2009-05-31 01:24) 

いっぷく

この神父さんがいた教会を訪ねました。
ビートルズの足跡を歩くのも趣味にしています。
アヨアン・イゴカー さんのつくる曲ひきこまれますね。
by いっぷく (2009-05-31 06:45) 

アヨアン・イゴカー

いっぷく様
マッケンジー神父は実在の人物なのですか!?想像だにしていませんでした。
それは、それは。ますます、ビートルズが魅力的に見えます。
by アヨアン・イゴカー (2009-05-31 12:09) 

sig

こんばんは。
私はビートルズ世代のちょい先なので、詳しくないのですが、アヨアン・イゴカーさんのこの演奏を聞いて打たれました。
原曲は知らないので、かえって純粋に聞くことが出来たかもしれません。
とてもいい曲ですね。
by sig (2009-05-31 23:30) 

アヨアン・イゴカー

sig様
失礼しました。誤解を受けるような書き方をしてしまいました。
私の書いたAs I was going down Treak Streetは、Eleanor Rigbyとは全く関係ありません。旋律も全く異なります。
YouTubeでお聴きいただけますので、宜しければお聴き下さい。
http://www.youtube.com/watch?v=0Q8vl8wFm7g&feature=related

by アヨアン・イゴカー (2009-05-31 23:43) 

すうちい

私は映画Yellow Submarineのなかで、Eleanor Rigbyバックに飛行士が涙を流すシーンが忘れられません。
高校生の時に見て、いまだに覚えてるなぁ。
by すうちい (2009-06-04 11:48) 

アヨアン・イゴカー

すうちい様
Yellow Submarineは街中でもテレビでもよく流れていましたね。当時、全く興味がなく聞きませんでしたが。
飛行士が涙を流すシーンですか?あの曲を背景に涙・・・見ていないから分からないのにその気持ちが分かるような気がします。あの曲が人をして落涙せしめても、不思議はありません。
by アヨアン・イゴカー (2009-06-05 23:17) 

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